記憶という実存
懐かしい友人と
30年ぶりに話す
30年を超えて
記憶が次から次へと蘇る
記憶という存在は
現れたり消えたりする
不確かな存在だ
しかし
現実を
大きく動かす力がある
振りかざすことができる力を
何処へ向けてゆくのかを決める際に
記憶が大きな影響力を持っている
記憶による力の振り分けが
現実を
次から次へと変えてゆく
そして
その現実が記憶となって引き継がれてゆく
記憶の連鎖の河の上に浮かぶボートのごとく
現実が右へ左へと揺れながら流れてゆく
私も
右や左に揺れながら
左や右に揺すられながら
また新しい記憶を
どこかにしまい込んでいる
この現れては消えてゆく不確かな実存を
確かなものに変換したいと願うことがある
そんな願いも
思考の内部にあるのだろう
しかし
願いは願いだ