ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

希釈される自我


人生を台無しにするような失敗を
しでかすことがある


このようなことを恐れる背景には
人生が「壊れやすい何か」でできていることがある


逆に言えば
この「壊れやすい何か」を
少しづつ日々積み上げてゆくのが
人生であるということになる


積み上げるべき「壊れやすい何か」を
日々捜し歩き
それを集めて積み上げてゆく


それは
食べものとは別のもので
身体の中に取り込むものではなく
むしろ
目に見えない家のように
身体の外側で
身体が過ごしやすくなるように
環境を整えてくれる存在に思える


そんな「壊れやすい何か」でできた壁が崩れると
身体は
生身のまま
無防備に
外に晒されなければならない


それが怖いから
「壊れやすい何か」を
ため込み積み上げ
未来に備えてゆきたくなる


この思いを実現するために
日々を費やし
「壊れやすい何か」のために
身体を捧げ祈げ
私の外にある「壊れやすい何か」のために
私を費やし
私の人生を守ろうと必死に努力を重ねる


この「壊れやすい何か」が
私一人で何とでもなる存在ではないから
私の肩身は狭くなる


私以外の存在とともに
「壊れやすい何か」を育み
その成長の過程で
私を
その「壊れやすい何か」の中に
希釈しながら
埋没してゆく


そうして
希釈された私の自我が
時に荒れ狂い大騒ぎをするのだけれど
細く長く生き永らえようと
静かにほくそ笑む


すこし哀しくほくそ笑む

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