ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

言葉が創る巣箱


社会性動物
例えば
ある種のアリやハチが
大きな巣を作り
大勢で暮らしている


そこに所属する個体は
それぞれの役割で巣作りに参加して
巣を維持するために働いている
例えば
ハチは巣の材料を運び
それで巣の修復をし
アリは土を掘り
土を巣の外へと運び出したりしている


直接的な巣作りばかりではない
餌を運び
仲間に分配したり
子供を育て
巣を維持する後継者を育成する


巣は
集団の象徴だ


この象徴の下に個体が集い連帯し
巣の内部の秩序が維持されている


そして日々
この巣のために巣から飛び出し
この巣のために巣に帰還する


人間も社会性動物だ


それぞれが家を持ち
それぞれの家を維持している


そればかりではない
理念の下に集い
その理念に従い切磋琢磨している


宗教や
主義主張の下に集い
結束を図っている


国や地域や人種が
それぞれの旗を振っている


このような集団のなかでは
言葉が熟成され
言葉が集団の象徴として機能をしている


一言の言葉であることもあり
膨大な蔵書であることもある


人々は
その象徴たる言葉が創る巣に入り
その巣を飾る言葉を修正し
その巣を飾る言葉を補修し
その巣を飾る言葉を継ぎ足してゆく


言葉が創る巣は見えないけれど
そこに集う人々を守り
そして人々を制約する


同じ巣に属する仲間は連帯し
異なる巣に属するとその連帯が機能しない


連帯は愛であり
同じ巣に属することで愛が育ち
衝突をいさめてくれる


だから
数多くの巣に所属して
たくさんの愛を育むと
衝突を未然に防止もできるのだろう


そのためには
たくさんの言葉を学び
たくさんの言葉で創られた巣を知りたくなるだろう


しかし
そんなに多くの巣に所属できないし
全ての言葉の巣を知ることもできない


それで人間は
紛争を予防しきれない


結果として
人と人は衝突し
集団と集団が衝突する


言葉には
人が衝突することを抑制する作用も
人が衝突することを促進する作用もある
けれど
言葉は万能ではない


たとえば
旅に出ると
どこか自由な心持になる


巣から離れるほどに
人間は制約から離れて自由になり
衝突を避ける促す機能も上手く機能しなくなる


ましてや
異なる言葉の巣に入ってしまえば
前に属していた言葉の巣の掟は通じなし
その掟で機能していたことも消え失せる


ひとつの言葉の巣の中に
どっぷりつかっていると
人格は
その言葉の巣の写し物のようになってゆく


ハチもアリも
自分の所属する巣を認識し
その落胤が強く押されているらしい


この烙印を消し去る知恵のない虫たちは
異なる落胤を持つものを
敵としか認識できないようだ


そんな虫たちは
集団の一員でしかいられない


そんな悲しい運命の中で生き延びているようだ

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