ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

あと戻り


「ゴルフの練習をすればするほど
 ゴルフが下手になる」という話を聞いた


そんなことは無いだろうと思っていたのだけれど
「なるほどな」と感じる出来事があった



その日もいつものように
ゴルフの打ちっぱなしの練習場で
闇雲に打ち続けていると
前の人がストレッチを始めた


何球か打つとまたストレッチをする


普段から身体のゆがみが気になっていた私は
身体を動かしストレッチをするのはとてもよさそうだと思い
前の人をまねて
ただ打ち続けるだけでなくて
時折ストレッチをすることにした


すると
ボールをうまく打てなくなってしまった


全部が全部と云う訳ではないけれど
いつものように打てないのだ


ストレッチをすると
スウィングに違和感を感じてしまったりして
どうも調子が出ない


ふと、ゴルフを始めた頃に
先輩から頂いた言葉を思い出した


「スウィングにいくつも癖があって
 それぞれの癖が打ち消し合って
 ボールがまっすぐ飛んでるよ」


・・・ストレッチをすると
   身体に染みついたゆがんだ癖がほぐれるから
   ボールが上手く当たらなくなるんだ・・・


こうに思い付いた瞬間に
私のゴルフは格段に上達した


癖を極める練習しかできなかった私が
癖を直す練習をできるようになった瞬間だ


アイデンティティーのこだわりのなかから
自分を救い出す瞬間はこのようなものなのだろう


自分では気が付かない癖を極めるために
その癖を擁護するような癖を
次から次へとつぎ足しながら
私は私のアイデンティティーを形成してきた


癖のあるアイデンティティーを



向かいたい先になかなか進めない袋小路に
入り込んでしまったときには
気づかないまま大事にしてきた何かを捨て去る勇気が必要だ


極めるばかりではなく
すこし休みながら
あと戻りするのも悪くない


でも
何処まで私らしさを削ぎ取り
普通になればよいのだろう?


あなたが教える私は
私ではないのです

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