意識には対象がある

対象としてのオブジェは
あくまでもオブジェであり
意識の中に取り込まれたオブジェは
意識であり
元のオブジェではなくなる

たとえば
視覚の対象としての花は
意識の中に花として認識されているが
花そのものではない

その花の花びらをひとつふたつと抜き
花の形を変えると
視覚としての花は形の変わった花であるが
記憶の中の花は
元の花びらの揃った花であることもできる

意識の対象としての存在するであろう
意識の外にある花と
視覚としての花は同時的な対応関係にあり
記憶の中にある過去の花は異時的な対応関係にある

異時的対応関係と
同時的対応関係は共進化の関係にあり
昔見た光景を何回も見るという帰納法的な認識により
同時的対応関係は確実なものとして認識されると同時に
昔の記憶である異時的対応関係もまた
確かにその時そうであったと確認される

このような共進化が成立しないと
たとえば
あることを言葉として表現しても
通じないと
誤用と判断し使われなくなる
あるいは
あの時見た景色は幻だったのか
と思ったりするように
意識の外の世界と意識の中の世界の対応関係に
疑問を呈するようになる

このようにして
意識は
意識の外の世界と
意識の中の世界との対応関係を
より整合性のあるものへと進化させている

だから
異時的対応関係でばかり
意識の内外の対応関係を判断すると
今の世界と隔たった対応関係を結ぶことになる

ゲームや本の物語の中にのみ身を置くと
現実離れしてしまうことになる

おなじように
同時的対応関係と
異時的対応関係であるのかを意識できなければ
やはり
今の世界との対応関係形成に不全をきたすことになる

今と昔を比べながら
同じであることを幸いとして
日々
日常を形成している

昨日枯れてしまっていたのと同じ花が
今朝また咲き始めた

昨日枯れた花は
現実的には
もう咲きはしないのだけれど
意識の中で咲いている
むしろ
昨日の花がまた咲き始めたと
思ってしまう

異時的対応関係と
同時的対応関係が
共進化の円環的関係の中で混じり合い
意識の中で花が維持されてゆく