うまくいくときもあれば
うまくいかないときもある

いつもうまくいくことや
いつもうまくいかないことは
頭の中で反芻することはあまりないけれど
うまくいったり
うまくいかなかったりすることが気になって 
頭の中で反芻を繰り返す

鳥のように飛べないことや
亀より早く歩けることは
取りに足りないどうでもよいことで
あいつより速く走れたり
あいつよりみじめな格好をしていることが
重要な関心事だ

それよりも
昨日の自分より速く走れることに関心が持てれば
日々成長するだろうし
昨日の私よりきれいに着飾れるようになれれば
他人と比較する必要もなくなるだろう

しかし
目の前にいるのは他人であって
昨日の自分ではないから
ついつい自分より他人と比較したくなってしまう

そして
負けたと思ったときに
昔の自分を思い出し
あの時の自分のほうがあいつより秀でていたと
自分を慰めたりする

勝ったと思ったとき
自分の昔を思い出し
あの時の自分のほうがあいつより惨めだったと
ここまでになった自分を褒めてみたりする

自分を褒める代わりに
相手を蔑んでみたりもする

「俺より遅かったくせに
　早くなって威張りやがって
　けしからん」

「俺より惨めな風体だったのになんだ！
　金をかければいいってもんじゃない
　何かずるいことでもしてるんじゃないか」

こうして
足の引っ張り合いがはじまる

悪くすればけんかになる

自分を慰めたり褒めたりして
他人を蔑まずにいたほうが
「まだまし」ということになる

直接的な利他ではないけれど
自分を褒めて
他人を蔑まないということも
戦略的な利他として
争いを未然に防いでくれている