病気になると
病気でない身体に憧れる

病気でない時に
病気である身体に憧れることはない
あったとしても
ごくごくまれだ

この非対称性に
妄想の生きようとする意志が表れている

妄想は
病気を嫌い
健康を好む

妄想は
人生の水先案内人だ

「ああしたい」
「こうしたい」
「ああはなりたくない」
様々に浮かび上がる未来の自分が
今の自分を触媒する

妄想を実現しようと
今の自分を鼓舞したり
勇気づけたりする

そんな妄想が
妄想の中の現実と対峙している

「ああしたい」
「こうしたい」
「ああはなりたくない」という妄想に
塩水を浴びせるように
妄想の中で
厳しい現実が暴れまわり
心地よい妄想を
悲壮なものへと変遷させてゆく

妄想が
妄想を呼び
その中から現実の記憶がよみがえる

その記憶が
妄想の中の現実を勢いづかせる

私の中の心地よい妄想よ
頑張れ

妄想の中の現実に負けるな

私の感じる心地よさが
私を触媒する

私はそんな心地よさに導かれ生きている

根拠のない
自己肯定感が妄想の中から湧き出して
それ今の私を支えてくれている

病気はしまい

たとえかかっても
すぐに治るはずだ

根拠のない自己肯定感が
そう妄想してくれている

現実よりも
妄想は優しい
時に厳しいが
とてもやさしい

状況は悪くても
もうじき好転するだろう

神様も
こんな妄想を
そっと支えてくれている