予定と実践:予定という魔法にかけられた人々
「魔法の言葉」と言われるように
言葉には魔法のような機能を有している
「右向け右」といえば
それを聞いた人が一斉に右を向く
この現象は
当たり前と思えば当たり前なのだろうが
不思議と言えば不思議である
人間でない他の生き物
たとえば
猫にしてみれば
なぜこのようなことが起こるのか不思議に思うのではなかろうか
なにしろ
猫に小判というように
猫には人間の行動を理解できないところがある
言葉一つで
一斉に同じ行動をとる人間を
猫は直感的に理解できるだろうか
魔法にかけられて
そこに居る人間が
同じよ振る舞っているいるようにしか
見えないのではないだろうか
そこに居て
律儀に右を向く人には
予定があったのである
「右向け右」と言われたら右を向く予定があったのである
そして
予定が在るのである
お金なのかもしれないし
誉め言葉なのかもしれないが
右を向く見返りとして
報酬を得る予定を持っていたのである
こうした予定を理解していなければ
一斉に右を向く行動は魔法にかけられたように見えるであろう
このように
予定を持つ者には
何の不思議もないことも
予定を持たないものにしてみたら
不思議でたまらないものである
戦争なんてことをする者の気持ちはわからない
それぞれに予定が在るのだろう
その予定を実践するために
戦場で命を懸けているのだろう
もしその予定が
罰や禍を逃れるという消極的報酬であるならば
とても悲しい定めという他ないだろう