予定と実践:言葉が描こうとする未来について
小さな正義を大上段に掲げ
他者を威圧しようとする人がいる
他にあるもっと大切な正義をないがしろにして
小さな正義を武器に
必死に社会と闘っている姿は
どこか悲しく映るところもあるが
本人はいたって本気であるので気の毒である
さて
こうした小さな正義を振りかざしている人にしてみれば
その小さな正義がとても大きな正義なのだから仕方がない
「そんな小さなことにこだわっていても仕方がないだろう」
などとなだめても
「何を言っているんだ。とても大事なことじゃないか」などと
火に油を注ぐ様なものになるから困ったものである
火に油を注がれると
小さな正義はますます大きく成長し
成長するにつれ
形相はますます鬼に近づいてゆく
鬼は近づけば近づくほどに
闘争は激しいものになってゆく
こんな非生産的なことを未然に予防しようと
様々な正義論が議論され
法律が制定されたり
道徳が説かれたりするのだけれど
正義が
大きくなったり小さくなったりするものだから
小競り合いはちっともなくならない
正義論も道徳も
所詮
人をたしなめ
人を卑しめるようなところがあるから
相容れない正義をぶつけられると
その正義や道徳は炎上を促す油になってしまうのである
「それではどうするのがよかろう」と考えても
妙案などない
あれば
争いのない世の中がすでに実現できているのだろう
せめて
言葉から離れられれば
少し違う世界にも出会えるのだろう
言葉がなく
予想不可能な未来に晒され
大きな正義も
小さな正義も役に立たない世界で
私は何を思うのだろう