華やかな舞台にも
暗闇がある

照明を落とした時の暗闇もその一つだ

そしてまた照明が光り輝き
舞台が煌めく

照明が照らす先に
観客の関心が誘導される

光に当てられた存在が全てという訳ではない
関心ごとはいつでも存在の一部に過ぎない

光の当たらない闇の中で
存在が育ち
光を受ける出番を待っている
それが
つぎの時代に大きな花を咲かせることがある
だからだろうか
何が現れてくるのかわからない暗闇を
かすかに照らしてくれる月の光が
心地良く感じられる夜がある

そんな時
興福寺の月光菩薩像の
ふくよかなな優しい表情を
ふと思い出す

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メモ

歴史は夜作られるという

幕が上がる前の夜なのだろう

表舞台の裏側で
次の時代を動かす者たちが
しかるべき準備を進めている

月夜のような薄明りの中に
ふと
次の時代がぼんやり現れることがある

それを見逃さない人が
その場所に集ってゆくのだろう

私の心の中にも
私の見えていない舞台裏があるようだ
しかしよく見えない
よく見えないながらも微かにトキメク
そんなあれこれを
ぼんやり自愛してみるのが
薄明るい夜の楽しみだ

未来を導くのは
有耶無耶としたすてきな妄想だ