記憶に残る経験と
記憶に残らない経験がある

記憶に残らない経験は
未来に向かって参考にならないもの
どちらかというと不都合なものが大半だ
だから
往々にして
その記憶に残っていない過去が暴かれると
厄介なことになる

遺伝子も
極めてまれに
不都合な先祖返りを表出する
皮膚が樹木や鱗のようになったりという病気も
その例だろう

進化の過程で苦労して獲得し
蓄積してきた形質であっても
今の時代に調和しない形質は
遺伝子たちがシステムの中で
ちゃんと隠してくれていたほうが有難い

エチケットというものも
そういうものなのだろう
昔のエチケットとして当然のことであっても
今風でなければ隠しておかなくてはならない
そうでなければ
周囲との調和が崩れてしまう

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メモ

出かける場所に応じて衣装を選ぶ
そして
その場に応じた言葉を選ぶ

制限された自由の中で
選択をしている

このような自由には
その制限の枠の中の枠内の自由と
その枠を未来に向けて変えてゆく枠外への自由がある

枠外の自由としては
禁煙ブームが挙げられる
嫌煙家が肩身の狭い思いをしていた時代が
愛煙家が肩身の狭い思いをする時代に
急激に変動してきたのがそれである

枠をずらしてゆく自由が
時代を変えてゆく

このような自由の力が
どこにあるのか突き止め
制御できれば時代を操れることになる
だから
それを突き止めようとするのが
人間の性なのであろうけれど
とらえたつもりでも
別のどこかに自由の芽が生えてくる

自由きままだ

そして
人間は時代に翻弄される

自由であることと
それを制御すること
この動態の中で
ゆっくりと
素晴らしいものが不都合なものとなり
やがて忘れ去られ
時代の遺物として表舞台から隠される

賛美される枠は動きまわるのだ