ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

身体に染みついた情報たち


「刷り込み」という現象がある


ハイイロガンのヒナが
卵から産まれ
初めて目にしたものを母親と認知し
その認知したものを追いかけ続ける


生れた時が
このような母親の「刷り込み」が起こる時期であり
産まれてしばらくすると
もう母親の変更はできなくなる


人間を初めに見たハイイロガンのヒナは
その人間を追いかけ続け
ハイイロガンである実の母親には目もくれない


人間の帰属意識も
似たようなものだろう
ただ
人間の場合
途中で変更可能だ


ルーツなどが
自分が帰属していると考えていたものが
実は違うことを認識する知力があるからだ


しかし
刷り込まれた帰属意識は
そうそう抜けない


仮に誤りだったとわかっても
簡単に
「ああそうですか」と変えられない


この困難さが
人間にも残っている
「刷り込み」の効果であろう


住み慣れた家
気のしれた仲間
手慣れた仕事
故郷

民族
母国語


捨てがたいものたちへの帰属意識を
消失させようとするとき
どうしても
自分を失うような気分に苛まれてしまう


私に刷り込まれている
「私らしさの情報」に危機が訪れようとするとき
私は私を失う危機を感じてしまうのだ


ただの情報の書き換えのはずなのに
身体さえ壊れてしまいそうな危機感を覚える


身体は情報を擁護してくれているのだろう
必死に情報を守ろうとしてくれているのだろう


身体はただ漫然と
情報を保持しているのではなく
身体が求める情報と
そうでない情報を
きちんと区別しているようだ


好き嫌いにかかわらず
情報が体に染みついてゆく
あるいは
生まれながらに染みついている
そして
その染みついた情報に従い
身体の命運が決してゆく


生命の本質だ

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