理性三態:時間を超越するということ
パブロフのイヌの頭の中で
きっと
抽象化された過去が
ベルの音を引き金として
唾液を垂らさせるのである
意識のなかで
ベルの音と給餌が
規則的相当性をもって存在しているのである
この規則的相当性が意識の中で維持されていることで
ベルの音が
「もうすぐ餌がもらえる」と想起させる
逆に言えば
この規則的相当性が消え去れば
「もうじき餌がもらえる」
などとは思いもしないであろう
さて
この「もうすぐ餌がもらえる」の
意識の中の「もうすぐ」には
時間は流れているだろうか?
現実世界の
ベルの音と
餌がもらえることは
時間差があるので
同時に存在しないこともあるだろう
しかし意識の中では
ベルの音と
餌がもらえることは
常に同時に想起されるべきこととして
規則的相当性が維持されているのである
パブロフのイヌは
時間を超越して
ベルの音と給餌を連ねているのである
しばしば
意識は
現実世界よりひと足先に
未来を描いている
現実世界と
理性が作り出す架空世界の間に
時間の齟齬がある
この時間の齟齬があるおかげで
原因と結果が同時に存在することもでき
因果律という規則的相当性を描けるのである
現実世界では
原因と結果は別々の時間に表れる
そんな原因と結果が
時間を超越した世界で結びついて
因果律が形成されているのである
時間を無視しながら
写し取った現実世界を
意識が動かし
過去と未来が
超越された時間の中で混然一体となる
パブロフのイヌもまた
時間を超越させて
ベルの音と給餌に思いをはせているのである