ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

再現能力:シクラメンが崇める神を私は知らない

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昨年の冬

白い縁取りのあるピンク色の花を咲かせていた

鉢植えのシクラメンが

夏

全ての葉を落としてしまった


もうだめかと思っていたけれど

水をやり続けていると

小さな芽が生え始め

白いまだらの入った深緑の葉を広げた


今年の冬も

きっと

この鉢のシクラメンは

白い縁取りのあるピンク色の花を咲かせてくれるだろう


昨年とは物質的には異なる花には違いないけれど

昨年と同じ花を見せてくれるのである


今年咲くであろうはずに花は

昨年咲いた花を見ることはない


それでも

まるで同じ模造のような花を咲かせるだろう


瓜二つ


シクラメンばかりではない


夏の積乱雲


秋の鰯雲


同じような経過をたどり

同じものが現れ消えてゆく


この帰納法的世界の裏で

幾重にも重なった

たくさんの現象が再現されている


目には見えない摂理に則り

たくさんの現象が再現されている


人の目に映る表舞台の裏側で

あるいは縁の下で

様々な現象が

表舞台を支えている


鉢植えの中のシクラメンの球根のなかで

何が起こっているのか

私には見ることはできないけれど

それを見ることで

なぜ毎年同じ葉を開き

毎年同じ花を咲かせるのかを

知ることもできるだろう


知の探究は

見えていないものを見えるようにする努力の上に成り立つ


そして

見えて来たものを応用して

再現できるようにと

同じことを繰り返す努力を重ね合わせてゆく


見えている現象が多いほどに

表舞台の精度も上がってゆくだろう


目は

何かを見せるために

別の何かを見つめ続けてきた


全ての細部に神が宿っているならば

神はすべての摂理を知っているに違いない


わたしの目は

シクラメンの花を見つめることはできるのだけれど

シクラメンの花ほどには

シクラメンの球根を知ることはないだろう


もし知ることが出来るなら

私の頭の上にも

白い縁取りのあるピンク色の花を咲かせることができるだろう

再現能力:制約の中で蠢く命

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人間に生まれるように神様にお願いした記憶はない


この指紋や手相をもらいたいと思ったことも

この顔になりたいと思ったこともない


今日の天気も

今日の気温も

私に与えられたものであり

私が創り上げたものではない


様々な制限の中で再現されている生化学現象が

私を私として維持している


様々な制限の中で再現されている気象現象が

今日の天気をもたらしている


太陽と地球の距離は誰が決めたのだろう


地球の自転軸が傾いているのはなぜだろう


安定して存在している偉大なる制約の中で

様々な現象が再現されている


そんな偉大な制約に変化が訪れると

その制約を条件として展開されていた様々な現象が

一斉に遷移を始める


時代の転換点である


パラダイム変換


常識が覆るのである


とある常識が非常識となり

とある非常識が常識なる


江戸時代

旅と言えば徒歩であった


それが公共交通機関になり

自家用車になってきた


主流は変われども

いまだに徒歩の旅行もあろうし

交通公共機関の旅もある


細胞分裂の増殖もあれば

有性生殖もある


卵を産む生物もあれば

胎児を母体内で育てて出産する生物もいる


酵素が基質たる化合物を包み

この包まれた平穏の中で反応し

変わるべき化合物へと変換されてゆく


胎児のように


そう

胎児のように


胎児のように

私は社会に囲まれた育てられてきた


この先

社会から何処へと産み落とされてゆくだろう


そんなことは

私が決めることではないだろう

再現能力:教育と制裁の果てに

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「気を付け」

「前へならえ」

「休め」


「右向け右」


言葉には

行動を再現させる力がある


言葉自体に力があるかというと

そうではなく

言葉を聞く側の能力にその力は依っている


馬の耳に念仏


猫に「お手」といっても

素知らぬ顔をされるのが関の山である


犬に「お手」と言えば

お手をしてくれることもあるだろうが

野良犬に「お手」と言っても

猫に「お手」と言うのと変わらないことになる


言葉を教育されていることで

言葉に

行動を再現させる力が宿るのである


言葉を覚えるということは

何かを再現できるようになるということである


もっと言えば

再現させられる力を持つことなのである


「赤」と聞くと

赤色を思い浮かべる


初恋の人の名を聞くと

その頃の情景を思い浮かべる


こうした思い浮かべるということも

再現の一環である


学習された言葉を聞くと

自由を失い

制限された現象の中に入り込んでゆくのである


知らない言葉を聞くと

それが何を意味しているのか気になる


人間には

自由を失い

言葉に身をゆだねる本性があるらしい


幼児の頃に

この本性が現れ

言葉を聞き

言葉を話始めると

親は喜ぶのである


DNAの暗号に従順にタンパク質が合成されることで

細胞内の秩序が維持されるように

言葉に従順になることで

社会の秩序が維持されていく


言葉が変われば社会秩序も変わり

DNAが変われば細胞秩序も変わってゆくのである


決められていることを再現してゆく安定と

決められていることから外れてゆく進歩と

決められていることから外れていく後退が

言葉や

DNAに基づく再現現象のなかで繰り返される


何を言っているか解らない若者言葉が現れる


何の意味があるのか解らない古語がある


遺伝子の中にも

転写されなくなった偽遺伝子が残されている


言葉に従う秩序と

言葉を無視する自由が

私の中で葛藤を繰り返す


「気を付け」

「前へ倣え」

「休め」


「右向け右」


制裁が秩序の方向へと進めてゆく


平和という秩序があり

戦争という秩序がある


自由はどちらへも傾ける力がある