たとえば
「上の者に従う」という正しさにより
組織が統制されていることがある

こうした状態では
組織の構成員の数だけ
この正しさが複製され機能しているから
構成員全員が
一体となって
特異な秩序を形成している

「正しさ」は複製され
複製された「正しさ」は
次々と
その「正しさ」を複製していゆく

このような複製の広がりの中で
同時代を生きる人々の間に
「正しさ」を共有し
時代を経ても変わらない「正しさ」が
伝統として承継されている

このような
同一の「正しさ」が確保さされた状態において
この「正しさ」と矛盾する別の〈正しさ〉が現れると
「正しさ」と〈正しさ〉は互いに
忌避すべき刺激とみなし合うことになる

この拮抗の中で
従来とは異なる〈正しさ〉が主流となると
この〈正しさ〉と相性の良い”正しさ”が
複製されて易くなり
全体として
以前とは異なる世界に遷移してゆくことになる

蠅は蠅のように生きてこそ正しく
犬は犬のように生きてこそ正しい

それぞれの王道を複製しながら生きているのだけれど
ふとその王道から外れてしまうことがある

突然変異は
そのような典型だ

多くの突然変異は
生きる能力に劣り消えてゆくのだろうが
なかには新しい〈正しさ〉として
新たな王道を導く突然変異があるという

突然変異は一生に一度の機会なのだけれど
考えを改めるのは一生のうち何度でもできる

何度でもできるけれど
何度もしていては優柔不断とみられてしまう

うまく悔い改めながら
成長するのも人生の妙のひとつだ

人生に挫折を感じるような大失敗は
そんな機会を与えてくれる貴重な転機にもなるのだろう