子供のころ
笹舟を作り遊んだことがある

川に流し競争するのだ

笹舟を川に流すと
途中で転覆する笹舟や
途中に張り出した小枝に引っかかり動かなくなる笹舟があり
全ての笹舟が
目標地点である大きな河への合流地点まで
たどり着けるわけではない

このように
自然の川の流れでは
様々な要因が
笹舟の運航に影響するので
笹舟が目標地点に到達するのは運次第ということになる

ところが
川岸をコンクリートで固め
笹舟の運航を阻害するような
石や小枝をすべて除去した川で
笹舟を流すと
ほぼ全ての笹舟が目標地点に到達する

仮に
笹舟がどこかに突っかかって
運航が障害されたら
その障害を取り除き
川をより笹舟が流れやすい環境を整備すれば
笹舟の目標地点への到達率は
どんどん上昇することになる

笹舟を改善するのではなく
川を改良することで
笹舟の目標達成率が上昇する

環境を整えることが
能動的に再現性を高めるのだ

＊

どの水分子も
川を上から下へ移動する

この受動的に再現される水分子の動きにより
笹舟も上流から下流に移動する

偶然
地下にしみこんでゆく水分子もあるが
砂漠ではない限り
たいていの水分子は
上流から下流へ流れる現象を
次から次へと再現している

受動的な状況でも
高い再現性をもって
水は流れて続けているのだ

＊

自然状態でも
水の流れは上流から下流へと
滞ることなく流れている

笹舟は
自然状態では
上流から下流へと流れるが
その流れが途中で滞ることが頻繁にある

このような前提で
水が流れてゆく現象は
受動的に再現されており
笹舟が〈滞りなく〉流れる現象は
能動的に再現されていると表現できる

生体内で繰り広げられている酵素反応は
能動的再現であり
血管を流れ続けている血液の流れも
能動的再現だ

工業機械の動きも
法律が規定する社会秩序も
能動的再現だ

整備されればされるほどに
画一化した繰り返しによる再現世界が広がる

この再現世界は
整備のやり方の数だけ現れ
整備のされ方で
それぞれの世界の栄枯衰退が現れる