ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

対応的同一:経験則と同一視・除外視


眠れない夜に数える羊には
個性がない
けれど
クラスメートを数える時には
数の中にも個性を感じる


水分子を数える時にも
クラスメートの顔を思い浮かべるような個性を
それぞれの水分子にも認めることが
言葉と物質の対応関係を
より厳密にする方策であろうが
現実的ではない


水分子は
どれも同じ水分子とし不便がないから
水分子に人間のような個性を認めないのが
人間の慣わしだ


水分子を同一視しても
経験則に影響がないのだから
いちいち区別する必要がないのだ


それでも
水分子の集合体である水については
水でも
汚れた水と
きれいな水は区別される


「この水は飲める」という経験則が
飲めない水や
飲むと危険な水を除外して成立するからだ


軟水を呑むのに慣れた人は
香水を呑むと下痢をする
だから
同じ水でも硬水は
飲める水から除外視される


このように
経験則を成立させるために除外を重ねてゆくと
より純粋な水となり
「水」として
永遠不変な存在になると考えられている


このような永遠不変な水を
現実のものとするために
蒸留を重ねて
蒸留水が作られるが
この蒸留水の中にも
二酸化炭素や酸素が溶け込むので
同じ蒸留水であっても
それぞれのコップにそれぞれの個性があり
同じコップの中でも
溶け込んだ二酸化炭素や酸素との距離により
水分子の性質も微妙に異なろう


しかしこのような微妙な差異は
経験則には影響しない


この影響のない範囲で
水は同一視され
経験則に影響がある範囲で
同一視されず除外視が働き
例外を除去し
経験則の成立をいじする


現実と思考の齟齬を埋め合わせるために
思考は除外を行い
体面を保とうともがき続ける



ひとつひとつの水分子に個性を認めないところに
物質と言語の間に深い淵がある


この淵に不安を抱かぬように
水分子はすべて同じだと思い込む


この思考の延長にイデア論があるのだろう


言葉は同一を創り
全てを把握したかのような境地を切り拓く


この同一視の裏切りの中から
新たな科学的発見が生まれて来た


経験則や法則は
同一視によりもたらされるイデアである以上
除外された個性に裏切られることになる


同一視は
経験則や法則が再現される範囲において有効な
認識であり
この有効範囲においても
総体化した言語の有用性も担保されている



人は皆異なる


だから
人を同じに扱おうとすると
かならずやどこかで裏切られることになる


裏切りをなくすには
蒸留を繰り返し不純物を除去した蒸留水のように
人を皆同じになるよう訓化しなければならない


水の中に潜む不純物が
水を用いた実験に失敗をもたらすことがある

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