妄想と現実:花開く妄想に誘われて
美味しいものを食べると
また食べたくなる
美味しいものを食べたことを思い出すと
それをまた食べたくなり
苦労をしてもかまわないから
そのものを手に入れたくなる
「美味しい」という味覚は
感覚の一つであり
個人の固有財産と同じく
個人に専属的形式を持つ存在である
専属的ということは
他者には引き継がれないし
共有することもかなわないということである
痛みもまた
味覚と同様に
個人に専属しているものであり
もがいている他人の痛みを理解しても
その痛みを共有することはできないし
その痛みを引き受ける訳にもいかないということである
こうした専属的な味覚に振り回され
私は
労働をし
お金を工面して
美味しいお料理にたどり着くのである
快不快も個人に専属して存在しているし
幸不幸も同じである
美味い不味い
痛い心地よい
美しい醜い
様々に相反する感覚が
妄想として精神の中を闊歩するが
これらは総じて専属的であり
わたしだけのものである
こうした客観的ではない主観により
私の行動は制御されている
「ああ
今日は何を食べようか」
お腹がすくたびに
私の妄想が花開く