意識を表現する技術
表現された言葉は
技術の結集である
技術には良し悪しがある
写実主義のような絵画のような文章もあれば
印象派のような文章も
キュビズムのような文章もある
夫々に技術の基準があり
夫々の良し悪しがある
夫々に
働きかけ方が違っている
人間の意識の中の
異なる場所に働きかけるように工夫されている
*
言葉に接すると
意識の中に意味が生まれる
この知識がなければ
言葉に接しても意味は生まれない
知識が
言葉とその意味を繋げている
言葉とその意味の関係を
誤って覚えることもある
勘違いすることもある
しかし
言語世界の中で右往左往しているうちに
間違いや
勘違いに気づき
この関係を覚えなおすことになる
このような知識は
社会が提供する技術である
*
生まれた人間が成長してゆく過程で
それぞれの個人の意識の中に
社会が提供する技術が埋め込まれてゆく
埋め込まれた社会の技術が
意識に現れ
生の感情を加工して表現されるにいたる
時には
生の感情が社会の技術を批判こともある
すでに埋め込まれた技術が
新しく導入されようとする技術を非難することもある
すでに埋め込まれた技術が
新しく導入されようとする技術と調和してくることもある
様々な技術や感情がもつれ合い
意識が醸成してゆく
*
意識は
様々技術からできている
社会と疎通する技術がない意識は
社会との間で不適合を生むことになる
動物を野蛮と称するのは
動物たちに
人間社会と疎通する能力が低いからだ
命の本質による差別ではない
技術に基づく区別である
技術力の差で
人が比較され区別されることもある
様々な技術があり
夫々の技術でその力量が計られる
*
万物が流転している
何の流転の動きを捉え
その流転にどのような影響を与えるのか?
ここに技術の本質がある
流転している対象は
人の心であることもあるだろう
動物の心であることもあるだろう
冷たい物質の塊であることもあるだろう
ときには
大きな景色であるのだろう
*
人には好みがある
好きな技術もあれば
嫌いな技術もある
他を排することにより
特定の技術の優位性を確立することがあり
優位性があるからそれを実現できる
技術は目的手はなく手段であるのに
技術の優位性を証明することが
目的になって
排他しあうことがある
悲しくてむなしいことなのだけれど
排他競争の熱気の中では
充実感が満ち満ちているのだろう