鼻がムズムズして
目がシクシク痒くなるから
花粉症は嫌になる

一体
なぜ花粉はこんな意地悪をするのだろうか？

花粉の存在意義は
めしべのところに飛来して
そこで受精すればいいのだから
人間の鼻の中に入り込んで
受精管を伸ばす必要性など何もない

このように考える理性も
無駄なことをしない意志もないから
花粉は
鼻の中に入り込んで
のんびり花粉管を伸ばしてアレルギーを引き起こすから
無知で野蛮な存在は嫌われる

人間様には大迷惑な存在だ

合理的な理性と意志をもって
他人に迷惑をかけないようにしないと
立派にはなれないと学習しなければならない

花粉にももっと立派になってもらいたくて
花粉に「もっと立派になりなさい」と指導したいところだけれど
花粉には言葉が通じないから困ってしまう

まあ
言葉が通じても
花粉に
「やりたいようにやるだけさ
　合理的じゃないって？
　それに何の意味があるんだい？
　やりたいようにやるだけさ」
と言い返されそうだ

命には
無駄がつきものだ

１０００個の卵から
１匹の成虫が育つとすれば
１００００個の卵を産めば
どんどん増えてゆくことになる

そうやって増えていく昆虫にとって
９９９個の卵は無駄で良いのだ

これが合理的な考えだ

無駄なことをしないことよりも
無駄なことをしてでも確実に命をつなぐことを優先し
それを実践している

それに
無駄なことをせずいい子になって汲々としているよりも
無駄なことをしながらも命を運んでいる虫たちの方が
どこか活き活きとしている

「無駄なことをしてダメじゃないか」と花粉を叱るより
なりふり構わず花粉管を伸ばす花粉の方が
活き活きしているということだ

ぐずぐず鼻水を垂らして
目をこすって文句を垂れている私に比べ
行く先など考えもせずに風に乗り
自由に舞い散る花粉の方が
たしかに活き活きとした自由がある

合理的な無駄を謳歌する余裕がなければ
生きている資格もない

ロボットではなく命なのだ

ぐずぐず鼻水を垂らしながら
それを愉しむくらいの余裕を持ちたいものだ

いい子でばかりはいられない