予定と実践:義務を循環させている心臓
植物の葉緑体は
光のエネルギーを補足して
水を酸素と水素に分解する
水は
別段
分解されたくもなかったろうに
運悪く
植物に吸収され
葉緑体まで運搬され
無理やり
分解されてしまうのである
葉緑体に運ばれた水に
自由はないのである
葉緑体に光が働き
光合成の機械仕掛けが動き出すと
酸素と水素に分解される運命にあるのである
機械仕掛けは
自由を制限するがゆえに
機械なのである
酵素も
そうした機械であり
言葉もまた
そうした機械である
私も様々な機械に晒され
自由を失いながら機能している機械である
私の目に触れた汚らわしい蠅は
叩きつぶされるのである
葉緑体に捕らえられた水のように
その蠅には生きる自由がないのである
生命は
目的に合致しない他者に対しては
自由を奪い
目的の合致する他者に対しては
協調しながら生き延びている
この協調が
目的が合致する範囲において行われることろに
裏切りが現れ得る
そこで
裏切られないことを目的として
他者の目的を
自らの目的とする戦略が現れる
ここにおいて
社会的戦略が練られ
義務が生まれる
他者から見た時の存在意義が
義務として
定着してゆくのである
私自身の存在意義を
義務の中に感じにくいのは
このような背景があるためだろう
そこで
いやいや義務を履行することになる
やがて
直接的な恩恵はなくとも
間接的に
私の存在機会をふやしてくれてるいるはずの義務が
心や体のそこここに宿しながら
生きている
葉緑体に取り込まれた水が分解され続けているように
私の心臓も自由を失い
義務を果たし続けている