不具合を除去することにより出来上がる円環のなかで
予定調和世界が恒常的流転を繰り返す

この機械的合目的性の中で
円環を乱す部分の存在が
円環の完成を阻害し
円環の予定軌道から外れ
元の軌道に戻ることができないと
円環を乱す存在は
恒常的流転の一環として
未来に姿を顕すことは無い

ドビュッシーが残した名言に
「芸術は最も美しい嘘である」というのがある

裏を返せば
真っ赤な嘘は
嘘のまま
円環を描くことができないままに
どこかへ流れ消えてゆくということになる

嘘にとどまらない嘘が
芸術として流転を繰り返し
恒常的な円環の渦として
未来へ流れてゆく

ドビュッシーの月の光が滴るような「月の光」を
私の手で私のピアノで奏でてみたいのだけれど
私にはピアノがない
奏でる腕もない
円環を描き切るには
優れた技術の集積であるピアノと
それを奏でる技術が必要だ

私は
「月の光」を奏でる技術を持ち合わせてはいないのだけれど
生きる技術は持ち合わせているようで
毎日毎秒呼吸をし心臓を鼓動させ
「月の光」の演奏に心を揺らすことができる

様々な恒常的な円環を描く技術が
私にも備わっているのだ

これらの技術を
同類とともに
未来に伝えてゆくことが
生命としての責務なのだろう

私は
大きな円弧の一環だ

私が創った円弧などどこにもない

そう感じるほど大きな円弧の一環として
私は
誇らしく
自己肯定感を中心に
私という渦を
これからも廻し続けてゆくのだろう