トリプルワールド71
酵素は存在である
Be動詞のように
反応前と反応後を紡いでゆく
*
化学反応を触媒する酵素は
基質を選択し
その基質に化学的変化をもたらす
様々な物質が混在する中で
酵素は
特定の物質を選択し
特定の反応をもたらす
従って
酵素に選択されない物質は
酵素による化学反応を受けることなく
気ままに存在し続ける
言い方を変えると
酵素に選択される基質となる物質は
酵素の存在により
必然的な因果律に晒されるのに対して
このように自由に存在している物質は
偶然に支配される世界を漂う
ということになる
このような因果律を与える酵素の種類が増え
基質となる物質の種類が増えてゆくと
酵素群により
因果律を与えられる物質が増えてゆき
酵素群の周辺の必然的因果律が支配する比率が
高まってゆく
このような
反応の増加による因果律の必然化は
知識が増加してゆけば
未来を予想する確度が高まることと相似する
技術が増加してゆけば
特定の未来をもたらす確率を上げられることと相似する
知識も
技術も
過去と未来を結ぶベクトルであり
反応だ
現象の循環の中で
このような反応の種類が増えてゆくほどに
必然が偶然を凌駕して
サードワールドは
セカンドワールドへと昇華してゆく
世界の主体たるセカンドワールドは
偶然がはびこるファーストワールドと
必然が芽生え始めたサードワールドに囲まれた
必然性の高い世界である
*
酵素反応の前と後で
エネルギーレベルは変わらない
原子の質も数も変わらない
ただ
組み合わせが変わる
形質の変化だ
Be動詞の右と左も
同じ存在を
意味の形質で変化させている
現象は形質の変化だ