ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

徴候と憶測:共同幻想と雨だれの音


雨だれの音が耳障りな夜のこと
その雨だれの遠い遠いはるかな向こうから
消防車の音が聞こえてきた


どこかで火事があったらしい


どれどれと見に行けるほど近くではないらしい


様々な憶測が
また眠りを妨げる


考えてみれば
火事があったことを確かめないのと同じに
雨だれの音を聞いているだけで
雨が降っていることを確かめもせず
「雨が降っている」と
布団の中でのんびり夢想している


雨だれの音は徴候であり
雨という状況を憶測している


明日
遠く
はるかに遠くから
戦争がやってきた


「こんにちは」
「こんにちは」
「こんにちは」
「こんにちは」


皆が口々に戦争に挨拶をした


その声が次第に大きくなってきた


私は
まだ
布団の中で雨だれを聞いている


やがて
雨が勢いよく降り出して
屋根をたたく音が大きくなると
雨だれの音はもはや聞こえないことになるのだろう

×

非ログインユーザーとして返信する