明日のために
チョコレートを半分残しておいて
それを食べることを
明日の楽しみに取っておく

今味わっている
チョコレートの甘味を
また明日味わい
今の幸せな気持ちを
また明日味わうためだ

このチョコレートを
誰かが見つけて
食べてしまうと
私は
その人を恨むだろう

チョコレートがなくなるからではない

私の幸せが奪われたからだ

チョコレートには
「私のもの」というタグの他に
「私の幸せ」というタグも結わえ付けられているのだ

目には見えないこれらのタグが
チョコレートを奪われることで
他人に奪われてしまうのだ

私が付けたタグ

目には見えないけれど
チョコレートに結わえた私のタグ

このタグにより
チョコレートは
ただのチョコレートではなくなっているのだ

物質は
様々なタグを取り付ける対象だ

同じ物質に
たくさんの人から
様々なタグが結わえ付けら結わえ付け

目には見えないけれど
神社の絵馬のように
様々な思いが結わえ付けられている

あの人のタグ
この人のタグ
私のタグ
あなたのタグ

限りある物質に
限りないタグが押し寄せると
争いが生まれる

やがて
その時が来ると
物質が
見には見えないタグの戦場と化すことになる

タグには
様々な予定が刻まれている

その物質がどうなるべきか？

その物質に付着したタグの間で争いが繰り広げられ
その物質の未来が右往左往する

物質には
目には見えないタグが付着しており
その物質の因果律を支配しようと企んでいるのだ

私の肉体も
そうしたタグが誘導する因果律に従い
息づいている

私の肉体と私の占める空間は
私のタグで埋め尽くされているのだ

目には見えない私のタグで
埋め尽くされた私の肉体

私の肉体は
私のチョコレートとよく似ている

誰にも奪われたくない空間だ

他の誰のタグも寄せ付けたくない
そんな特別な空間だ

できれば
チョコレートを隠すように
私の肉体をどこかに隠しておきたいのだけれど
隠してばかりで窒息してしまうから
家から出てさわやかな空気を吸いたくなる