予定と実践:語り継がれて来た物語
時を超えてゆく存在には
保存的存在
循環的存在
能動的恒常の
概して三つの類型がある
一つ目は堅牢な存在
かたい岩石の様なもので
同じを頑なに維持する存在である
石に刻まれた文字は
その文字が読まれなくなっても
その形を残し続ける
二つ目は循環する存在
海のように
その構成物が循環している存在である
川もまた
流れ去る水を補うように
上流から水が流れ込み
その川の流れを維持している
三つ目は同一を創造する存在
物語の様に
語り継がれてゆく存在である
生命は遺伝子を語り継ぎながら
伝統文化もまた
語り継がれ時間を超えてゆく
一つ目に比べ
二つ目
三つ目と
存在主体の自立性は低い
固い岩石や装飾物も
風雨や温度の急激な変化を避ける環境にあるほど
長くその形状を維持できるという点で
自律性は完全ではないものの
海は
雲や雨や川とともに水の循環の一部に過ぎないし
語り継がれる物語は
それを読み
それを聞く人がいて始めて語り継がれてゆく
二つ目に比べ
三つ目には
存在主体の能動性が高いと観察できる
同じものを作り続ける能力により
維持されて
時間を超えてゆく存在が
三つ目の存在である
目や耳や口は
それぞれに独立した存在の様でいながら
他の能動的働きがなければ維持できない
依存性の高い存在であり
石のように
自立的にただそこに在れば存続してゆけるものではない
自律しなければならないのである
他に依存し
他から依存されるように自律しなければならない
こうした自律の工夫を重ね
はじめて語り継がれるのである
今生きているということは
素晴らしい物語を語り継いでいる自律した主体であることを示している
語り継がれ荒れてきた物語と
共に生きてきた主体なのである
そうして語り継がれて来た物語を
「悪」とか「善」とか言いあわらし
そうした物語を批評するのであるから
人間は大した生き物である