円環創生因果:円環の総称とその断片
円環を循環する現象の記憶を
繋ぎ合わせ照合し
帰納法が成立する
だから
円環として循環していない現象は
記憶のなかで帰納させることができない
名高い絵画作品は
その創造は一度限りだが
その絵画の鑑賞は帰納法的に繰り返されるから名作になる
絵画の創造も
ひとつの絵画に限れば
創造は一度限りだが
美の創造ということになれば
帰納法的に繰り返されている
ひとつの善行は一度限りだが
善は帰納法的に繰り返される
ひとつの人生は一度きりだが
人生は帰納法的に繰り返される
肝臓の細胞分裂も
ひとつの細胞分裂は一度きりだけれど
総称としての細胞分裂は
何回も何回も繰り返されている
わたしも
繰り返される現象の総称としての「人生」に
乗っかって生きている帰納法的断片だ
それでも
私は
総称ではなく個称だ
と
思いながら
自分の人生を切り拓き
必死で生きている、、、つもりでいる
しかし
様々な場面で
総称の中に埋もれて帰納法的に
生を紡いでいる現実を目の当たりにしていることも事実だ
美や善や人生は
私の中にあるつもりでいながら
私の外に総称としてのみならず
実体として散乱している
美や善や人生をいう総称たる言葉は
私の中にあり
私が咀嚼しつづける言葉であり
私の言葉が正しく
私の記憶が正しく
私の判断が正しいと
私は信じている存在である
が
この私の中にある言葉たちは
私の外の世界と
帰納法的に連なった円環の断片でしかないのであろう
私が操る言葉は
独我的世界に佇みながら
ひそやかに
そして確実に
必死に外の世界を眺めてくれている
私の目も口も耳も
私の独創物ではない
この非独創性が
様々な帰納法を成立させてくれている
分かたれ共有する偉大なる断片だ