妄想と現実:家畜たちの神様
豚肉は
牛肉とは違う味がするし
鶏肉とは全然違い
マグロの肉とは全然趣向が異なる
料理人にとって
味は
肉の本質なのかもしれないが
当の肉にとっては
味などは
大地を駆け巡り
大海原を回遊する足しにもならないことである
肉たちは
料理人の味覚という妄想に振り回され
切り出され
もみほぐされ
熱処理されるのである
肉たちは
大地を駆け巡り
大海原を回遊する妄想の中
生み出されて来た
その妄想は
料理人の妄想に敗北し
まな板の上に横たわっているのである
しかし
家畜にとっては
小麦やお米と言った農作物と同様に
それも生存戦略なのかもしれない
家畜にとって
人間に
美味い肉を提供することにより
繁殖を保証してもらえる大切な属性なのである
肉のために
大切に育ててもらえるのである
肉は体細胞であり
生殖細胞ではない
だから
生命の連綿とした営みの中で
肉は尾ひれであり
結果として
肉を切らせて
子孫を残すのである
家畜たちの神は
生き残るために
人類に
美味しい肉を提供することを
約束したのかもしれない
きっとそうに違いない