アリが一列になって行列する

脇に逸れ
隊列を乱す個体はいない

まるで軍隊の行進のように
統制されている

この行進のからくりには
道しるべフェロモンという物質が関与している

このフェロモンを
先頭のアリが地面につけてゆく
アリには
このフェロモンが付着した場所を
歩く性質が備わっているため
先頭のアリの後を
次々と仲間のアリが続いて行進するようになる

後に続くこのアリたちもまた
道しるべフェロモンを地面に付着させるので
行進の軌跡はますます洗練された道となる

人間には
アリのフェロモンを感じることができないので
どうして行列が乱れないか不思議であったが
フェロモンを検知できるようになり
このフェロモンのアリに与える影響を知るにつけ
この不思議が解消されて来た

人間の言葉を聞けない生命も
人間の軍隊の行進を不思議がり
観察の結果
人間には声があり
その声に従う性質が人間にあることを突き止めれば
この不思議を解消することができるだろう

フェロモンを産生することと
フェロモンに従順であることが
アリの行列を整然としたものにしている

アリの行列のもたらす恩恵が
フェロモンの産生を促し
フェロモンへの従順さを育てているというのが
自然選択の考え方だ

先人の教えがもたらす恩恵が
その教えを広め
その教えに従順になることを推し進めているということだ

迷信にも一部の理があるのだろう

その理は
畏れることで慎重になる恵であるかもしれないし
迷い悩むことによる成長であるのかもしれません