ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

局在と遷移:反応の集積としての情熱の嵐


動物は死ぬと
叩いても蹴っても
痛がらなくなる


猫も
犬も
鳥も
死ぬと苦しまなくなるようだ


何の反応もなくなる


逆に言えば
生きるということは
反応するということだ


反応が反応を呼びながら
体の各部位が
それぞれの役割を果たしながら
反応の場を維持している


応援されることが少なくなったスポーツが衰退するように
評判が落ちた商品が減産されるように
どこかの反応に滞りがあると
反応が反応を呼ぶ嵐が収まり
生命力が鎮まる


箸が転がってもおかしい


こんな過敏な反応は
言ってみれば
生命力の証なのだろう


目に映るものすべてに興味がわき
それぞれに反応する命の輝きは
年とともに失われ
何を見ても興味をひかれなくなるの
老いた証左なのだろう


新しい家電品の性能に興味を持ち
それを買いたいと貯金をし
購入できた暁には
取扱説明書を喜んで読み込んだのは
遠い昔の話で
今では
新しい機械が億劫で仕方がない


なんとも情けない


大きな刺激を求めることも大切なのだろうが
小さな刺激にも大きく反応をする感受性を
もう一度
高めてゆきたい


この感受性に局在が宿り
反応が反応を呼び始め
やがて情熱の嵐が舞い戻れば幸いだ

局在と遷移:踊らされながら失うということ


車がまだ珍しい時代に生まれた


道路は狭く
でこぼこ道だった


道路わきの電柱は木製で
コールタールが表面に塗られ
暑い夏の日にはその表面がとろけていた


たまに車が通ると
土ぼこりが上がり
排気ガスの匂いが
その土ぼこりに交じっていた


その匂いに文明を感じたのか
友達と争うように
その匂いを嗅いだ


わずかに
馬車が残っていた


車の排気ガスと
馬の糞の匂いを比べ
車の排ガスの方がはるかにいい匂いだと
言い合った


文明に育てられてきた


道路が広くなり
アスファルトで舗装されるたびに
嬉しくなった


建物が建ち
街がにぎやかになるたびに
嬉しくなった


文明に惹かれるのは
本能的に
文明は人類を守ってくれる素敵な存在であると
感じるからだろう


素敵な存在を身の周りにおける幸せが
文明が進めば進むほどに増してきた


文明にもいろいろある


芸術や宗教も文明なら
科学も文明だ


精神文明と
物質文明


どちらかがあればよいというものではない


海の香り
苔の匂い
樹木の香り
谷川の匂い


どれかがあればよいというものではない


一度に囲まれればよいというものでは決してない


別の空間で
別の時間で
それぞれを愉しむ


この愉しみの傾向が
それぞれの空間を拡げ
それぞれに時間をかける努力を傾け
時空を変遷させてゆく


愉しみの中に埋没し
失った時空を
時に寂しく思い出す

局在と遷移:正義を維持するための努力について


「気温は40度以下であるべきである」


「べきである」には
そうはならない現実が隠されている


だから
「べきである」を維持するために
工夫がなされる


たとえば
外気温はどうにもならないが
部屋の中の温度はクーラーで下げることが出来る


小さな部屋であるほど
気温の制御は容易になる


家よりも部屋
小さな部屋
車の中
小さな車の中


だから
地球の気温を制御するのは至難の業だ


それでも
「地球温暖化防止」と旗を振り
懸命に何とかしようと努力を重ねる


人の心を制御するのも
気温を制御するのと同様に困難を伴うから
叶わないなりに努力を重ねる


私の心も
私は制御しきれないから
何かの目標を決めても
三日坊主に終わることが大半だ


簡単なことは続けられるが
大変なことはなかなか続かない


続けられることを続けることしかできないから
小さな部屋を冷やし
結果として
電気を消費して
外気温を少し高めさせてもらうことになる


こうした小さな努力が積み重なって
外気温はどんどん上がってきたらしい


「気温は40度以下であるべきである」


この命題は
真であるのか
偽であるのか


地球規模で考えるべきなのか
私が住んでいる地域で考えるべきなのか
私がいる小さな部屋の中に限り考えるべきなのか


私の力で制御できる範囲の中で考えるべきなのか


「気温は40度以下であるべきである」


この命題を地球規模で考え実践するためには
大いなる力が必要だ


その大いなる力で
小さな幸せを犠牲にし
大きな目標を達成しなければならない


温暖化防止のための独裁とそれに従う忠誠が必要だ


私にとって
私の小さの部屋の温度が
地球の温暖化より重大問題なのだから
これを逆転するには
私の意志を覆すほどの大きな権力が必要なのだ


クーラーの温度設定を1度下げると
非国民と蔑まされ
周囲の皆からいじめ虐げられ
それが嫌で
クーラーの設定温度を逆に2度も3度も上げ
汗だくになりながら
「俺は偉い」と胸を張りたくなるような
大きくて偉大な権力が必要だ


「気温は40度以下であるべきである」


これは人間の正義であり
生命の正義ではない
ましてや
地球の正義ではない


温暖化しても地球は回り
なにがしかの生命が繁栄するだろう


人間が無理をしてでも努力しなければ
叶わない正義である


無理を強いられなければ
叶わないのが正義なのだから仕方がない


正義のために
犠牲になる自由がある


SNSで
正義が叫ばれ
犠牲が顕れる


自由を求める人間性は
小さく隠蔽された部屋の中に暗闇に押し込められる