ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

エッフェル塔議員への同化圧力と異化圧力


SNSによると
エッフェル塔の前で
研修旅行の国会議員が
観光客のように記念撮影をしていたようということらしい


これに対する批判は
嫉妬まがいの同化圧力が加勢しているだろう


自分たちと同じはずなのに
なんでそんないい思いをしているんだ


このように
自分と比較することで同化圧力が働き
嫉妬を増長するのだ


これに対して
大金持ちが宇宙旅行を自慢しても
自分と真剣に比較することを避けるのか
同化圧力はあまり働かせずにいたりする


むしろ異化圧力を働かせ
あの人たちはそんなものだよね」などと
自分とは違う人種だからと
嫉妬しないようしているところがある


このように
同化圧力を働かせるか
異化圧力を働かせるかで
圧力の対象者の処遇は大きく変わることになる


異化圧力を働かせると特権を認め
同化圧力を働かせるとみな平等となり特権は無くなる


考えてみれば
国の王様や国会議員のようないわゆるお偉いさまは
異化圧力の下で権限を維持しているということなのだろう


このような異化圧力をいいことに
マウンテンを繰り返し横暴の限りを尽くすと
同化圧力が働きはじめ
フランス革命のように
王族がギロチンにかけられるようなことにもなりかねない


王族に対し異化圧力をかけるのか
同化圧力をかけるのか
この判断がどちらかに大きく傾けば
その集団はまとまるが
偏りがなく拮抗していると
集団はまとまらず
社会の分断が進みやすくなり
これが進めば
複数の集団ができてくることになる


そして
複数現れた集団間には
目には見えない隔壁が設けられ
この隔壁が
文化圏を分かち
歴史を経ながら
国境を維持していることもあるのだろう


以上のように
人間は
異化圧力と同化圧力をかけ合い
社会を営んでいる


エッフェル塔の記念写真を非難する国民には
国会議員は同化圧力の対象であるようだが
国会議員に利害関係のある国民にとっては
国会議員は異化圧力の対象にもなる


こうした以下圧力を持つ国民は
一般国民との間に隔壁を設けながら
国会議員をよいしょするのだろう


時代劇の悪代官と越後屋は
隠れて悪事を打ち合わせる


こんなドラマチックで典型的な隔離をせずとも
官僚を国会議員を通して動かしたい勢力にしてみたら
国会議員は特別の存在であり
同化圧力などかけようはずもなく
場合によってはこびへつらい異化圧力を働かせることになる


人は平等であるという同化圧力と
人は努力次第で異なるものになるという異化圧力の間で
波が起こり
その波のまにまに
たくさんの人が
集団となり
また
集団を解消したりしながら
社会の海原を航海している


SNSは
この波の大きな物見やぐらなのだろう


匿名により
以下圧力から解き放たれ
子供のような眼を持つ面々が
同化圧力をかけようと
裸の王様を探し回っているようだ

局在と遷移:不完全な独我たちの遷移


半透膜で仕切られた内側で
細胞が規定された反応を巡回させているように
不完全な隔壁で守られた内側で
それぞれの独我論がそれぞれの規定を巡回させている


この巡回は
隔壁の不完全性において
外部とわずかに交流し
この交流により
独我論は遷移する


「こうあるべきである
 しかし
 世の中はそうなっていない
 これは何かの間違いだ」


こうした
独我論的思考は
外部を遮断することで
より独善に推移してゆく


言葉や宗教の違い
それに国境などが壁となり
国家の意志も独我論的に
それぞれの独善に傾く


「壁を壊せ」
「壁を壊せ」
「壁を壊せ」


身体の隔壁を壊すと
血がにじむ


これと同様に
独我論的思考は
壁の崩壊に伴い
それぞれに血をにじませる


壁に囲まれ守られて来た「正しさ」が
悲鳴を上げながら立ち尽くす


「なぜ私だけを守らないのだ
 ほかの正しさなど問題ではない
 ただ私の示す正しさを守らねば
 やがて後悔することになるだろう」


蠅と蚊を混ぜ合わせて
より良い虫を創ろうとしても
中途半端試みに終わりかねないだろう


壁を壊し
いたずらにエントロピーを増大させてはならない


それぞれの良さを守るのは
それぞれの壁である


壁は壊さなければならないが
全くもって壊しては
元も子もなくなるだろう


今も
壁が独我的局在を育て上げている

局在と遷移:読書というプチ独我論体験


本を読んでいる時
本以外の現実は
遠く向こうに追いやられ
意識は
両の手のひらに乗るような小さな本の中に埋没する


本が醸し出す世界に没頭すると
本以外の現実は
もはや意識にとっての現実ではなくなる


その現実は
本が醸し出す世界を阻害する邪魔者に成り下がるのだ


このような独我論的な意識の中に引きこもり
現実を忘れると
身を危険にさらすことになる


安全な場所で没頭すればともかく
江戸の世で
本に夢中で参勤交代の殿様を無視すれば
打ち首にされてしまうやもしれない


こうした
ある種特別な状況で
本の中の物語が進行する


その物語の主人公たちこそが現実であり
本の外の現実は非現実になってこそ
物語は佳境に入ることが出来るのだ


命たちは
それぞれの内に持つDNAが描く物語に
夢中になりながら生きている


その物語にそぐわない現実に対しても
無謀に挑戦しながら
その物語を着実に現実のものとして実践を繰り返す


周囲が醸し出す現実よりも
内なる物語が醸し出す現実の方が大切なのだ


この非現実的な対応こそ
生きる力だ


蜘蛛の巣にかかった蝶は
蜘蛛の糸から逃れようと必死には羽ばたき
蟻地獄に落ちた蟻も
その砂地にできた傾斜を必死に登る


独我論的夢想が
現実とぶつかりながら
その夢想を遷移させゆく


生き物たちは夢を見る


その夢の中で
現実と対峙しながら生きてゆくのだ