生きている水、死んでいる水
身体のほとんどは水で
成人の約60〜65パーセントは水分だ
水は
生命物質と呼ばれる有機物ではないし
栄養素でもない
けれど
水がなければ生命は成り立たない
水は
飲まれた後
身体に吸収され
汗として蒸発したり
尿や糞として排泄され
周囲の環境と
身体の間を循環している
このように循環している水は
生命物質なのか?
それとも
単なる循環している物質なのか?
水は生きているのか?
それとも
水は死んでいるのか?
*
爪や髪の毛は
細胞が作り出した有機物の塊である
これらの有機物は
切り取られゴミ箱に捨てられ処分される
死んでいるのか?
死んでいるとしたら
いつ死んだのだろう
切り取られたときか?
それとも
細胞外に押し出された瞬間だろうか?
*
生死は
物質ではなく
現象である
たまたま
現象に巻き込まれる物質もあれば
現象とは無関係でいる物質もある
同じ水からできている雲にも
様々な形があり
様々な動きがある
同じ物質が
その動きに応じて
多様化する
隣接する他の物質に応じて
多様化する
周囲の状況により
多様化する
物質の命運は
その物質だけでは予想できない
*
社会の中にあって
私も
社会現象に巻き込まれる物質のようなものなのだろう
雨が降れば傘を差し
熱くなれば薄着になる
ただ
足がある
どんな現象がどこで起こっているかを
見極める感覚がある
そして
それを覚えておくことすらでき
その場所へ足を運べる
ただ現象に巻き込まれるばかりの受動的な物質ではない
私の足で水を探し
私の手で水を汲み
それを飲み
その水を
私の生命現象の中へと引きずり込む