ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

生命と反応:origin of words


言葉が存在することに驚かなければならない


そこに空気があり
程よい気候があることと同様に
そこに
言葉が存在することに驚かなければならない


ダーウィンは
「種の起源」において
育種家を例に出し
種が変わることを記載した


そして
環境やその習性により種が変わってきた実績として
ガラパゴス諸島のフィンチを記載した


種は
普遍的ではなく
変わりゆく恒常であり
この向上性維持の原理として
自然による淘汰選択を議論した


ダーウィンが
地球を航海しながら
見慣れた生物種が消え
奇妙奇天烈な生物種が
処々に点在することに驚いたように
言葉が存在することに驚かなければならない


奇妙奇天烈な言葉が
世界各所に点在し
若者により
言葉の意味を捻じ曲げられ
新しい言葉が流行することに
驚き
それでいて
それらを受容してゆかなければならない


人間が
言葉を淘汰選択し
選択された言葉により
次は
人間が淘汰選択されなければならないからだ


言葉は環境であり
正義論もまた環境としての恒常だ


庭先でごみを燃やすのが当たり前だった昭和は
遠い昔になってしまった


高校球児の丸刈りも
消えて始めた


ジャニーズという言葉も
華やかな印象だけではなく
ずるがしこい悪徳の影を引きずるようになった


ウクライナに栄光を
ロシアに栄光を
パレスチナに栄光を
イスラエルに栄光を


様々な言葉が
現実により
淘汰選択されてゆく


大局的には
言葉の淘汰選択するものは
生身の自然であり
言葉ではない


その自然に対抗するために
言葉は
他の言葉を味方につけ
連帯を深めてゆく


赤という言葉は
朱という言葉と共に
青という言葉と連帯し
その意味を輝かせ
言葉のなき世界から
存在意義を醸し出している


言葉の意味は
生身の自然と直接触れ合うことはできないが
物質となった言葉の形は
自然の猛威にさらされることになる


たとえば
エジプトのピラミッドに描かれた言葉が
風雨にさらされゆっくりと消えてゆくが
音として発せられた言葉は
瞬く間に消えてゆく


記憶された言葉は
記憶があるうちは存在するが
忘れられれば消えてゆく


動物行動学に
「ティンバーゲンの四つのなぜ」というのがある


1 個体が発生(成長)していく中で
  どのようにしてその機能ができていくのか
2 どのようなメカニズムでその機能が働くのか
3 進化の過程でなぜその機能が変化したのか
4 なぜ現在その機能をもっているのか


アリストテレスの四原因説の応用と言われているが
動物の行動を理解するために
この四つの疑問に剃って整理することが推奨されている


記号論も
このような「四つのなぜ」に沿って説明がされ始めているのだろうか


正義も
法律も
この「四つのなぜ」に沿って啓蒙されている


行動という運動を
物質との関係を理解しながら
その目的という抽象へと思考を羽ばたかせてゆく
思考の方法だ


3番目の進化の過程は
1番目2番目の機能の仕組みと形成
4番目の目的性と深く関係している


進化は
目的の合理性と
目的を実践する機能性により
常に淘汰選択されているからである


目的は正統でも
その手段が実践的でないと
淘汰されることになる


正義の戦争も
実力がないとその正義は潰えることになるのは
正義論者の悲しみだ


そこで
正義論者は
生命が生きることを目的として
生命環を回すように
正義の実践を目的として
Plan(計画)
Do(実行)
See(評価・見直し)を繰り返し
実践としての手段を模索し続ける


その成果として
大量殺戮を容易とする近代兵器が進化し
脅しの手札や
実際の攻撃として実践されてきた


これもまた
正義論者の悲しみなのだからやるせない

生命と反応:独裁心と正義の信号機


私は
私の
私のための秩序を
私の範囲の中で
維持している


私の
私による
私のための独裁だ


そこに他者が現れると
その他者に応じて
私は
私の独裁を解き
その他者という環境に適応しようと思案する


私の独裁は
私の眼前の他者をすべからく支配下に置きたいのであるが
そうはいかない


だから
逆に
支配下に置かれているような心持ちをしながら
他者と向き合うことになる


支配下になってでも
他者に適応しようとする心持が人間に備わっているものだから
人間は社会を営んでいるのだろう


他者に適応しようとする心持がなければ
山の中で
一人静かに
自身の独裁の中に身を置けるのだろうに
そうはできていないらしい


考えれば
支配もまた
他者への適応戦略の一つである


むろん
服従も戦略であり
忌避も
友好も戦略だ


見知らぬ人を警戒するのも
そんな戦略の入り口だろう


こうした戦略の実践に
言葉が使用される


投げかける言葉に応じて返される言葉が
信号機のように色を変え
それぞれの戦略を伝えている


そう
私は信号機であるのだ


言葉を発する信号機として
社会の岐路を演じているのだ


正義に従えば
歩行者として
横断歩道に一歩踏み出せば
横断歩道の手前で車が停止してくれるはずである


そうなれば感謝し
そうならなければ
悪党呼ばわりしながらその車を恨んだりする


私は
正義を伝える信号機なのだ


自信のある正義に目立つ色を彩り
自信のない正義を控えめに発する信号機なのである


私の中の独裁心が
自身を持ち
強い色の正義を発することを望んでいる


誰にも負けない
正義の色を振りかざすのだ


ところが
寂しいことに
目指すということと
実践するということに
大きな差がある


せめて
小さく狭い私の中で
私の正義を
呪文のように
私のためにひとり呟く

生命と反応:遥か遠くに浮かぶ心の高みにて


何の屈託もなく昼寝していると
意識が遠くにぼやけ
それでいて
幸せな気分に浸ることが出来る


あれこれと
思索を巡らせ
忙しく意識の中に没頭している時の様な
高揚感から離れ
まどろんだ
幸せな気分に浸ることが出来る


縁側のひだまりで昼寝をしている猫の様な気分である


サバンナの木陰で
満腹のライオンがそうするように
目を時々開けて周囲を眺めるが
また睡魔に襲われるのか
元の位置に頭を戻して目を閉じる


敵も味方もない


敵であることも
見方であることも
意識と一緒に
遠い世界へ離れてゆく


憤り目を見開いていた顔も
悲しみの中でゆがんでいた顔も
今はない


本当は
為すべきたくさんのことを抱えていた


昼寝などしている暇などない


怠けて昼寝をしていたのだ


ちょっとした罪悪感と共に
目をこするのだけれど
ぼんやりした頭は
まだまだ平和ボケの中にいる


怒りも
悲しみも
遠くに追いやり
私だけ取り残され
昼寝の床の上で頭を持ち上げる


その時
だらしなく半分開いた口から
よだれがたれた


「ああ
 このよだれのために
 私は生きているのではなかろうか」


ちょっと昼寝をするつもりが
気づけば
夕暮れが近づいていた


この心持に戻れなければならぬのだろう
憤り目を見開いている時も
悲しみの中で顔をゆがめている時も
この心持を思い出すことが出来なければならぬのだろう


生きることを超越するのだ


無防備な丸裸で
核搭載ミサイルに立ち向かう覚悟で
生きることを超越しながら
生き永らえるのだ


高尚な心が
よだれを垂らしながら
空に浮かんでゆく


地に足をつけずに
空へと舞い上がる


ああ
何という穏やかなまどろみなのだろう


あと一時すれば
私はまた
信号機の色の変化に一喜一憂しながら
信号機の色の意味を噛み締めることになるのだろう


信号機の色は
それぞれの正義を象徴している


戦争には
それぞれに違う正義を宿した信号機があるのだろう


交差点は
危険な空間だ


様々な正義が
高尚な空から舞い降りて同じ時空に交差を繰り返す