平衡と遷移:平衡の中にある循環
結果が紆余曲折の末に
その原因を誘導すると
循環が出来上がり
循環が恒常的になると
循環としての平衡状態が成立する
この紆余曲折の間に
循環の軌道から外れてしまうことがあっても
たくさんの存在が
その軌道にあり
増殖することができれば
外れた存在を補完して
平衡状態を維持できることになる
モンシロチョウは
100から200個の卵を産む
その卵のほどんどは
成虫となり産卵することはなく死んでしまう
しかし幸運な数匹が
成虫となり
モンシロチョウの生活環を紡いでいる
一匹の雌の鮭のお腹の中には
3,000~4,000粒の卵が入っているという
モンシロチョウ以上に
成熟するには多くの障害があるのだろう
鮭の神様は
過酷な運命を用意しているらしい
狭き門を潜り抜けた幸運な鮭が
遡上して産卵するのである
死滅する鮭を含め
鮭の生活環の連続全体に
鮭の神様が君臨し
その平衡を保っている
一匹一匹の鮭
一粒一粒のいくらは
こうした神様の一部に過ぎない
ただ
与えられた運命を全うしようと努力するのだ
死滅する個体も
そんな神様の一部として
生まれ死んでゆく
個体はみな神様の一部としての捨て石のようだ
生命は
遺伝子を運ぶ船だという
生命一つ一つは
手段であり
目的があるとすれば
生命の総和としての平衡だ
遷移しながらも
同じ生命現象が
平衡を保ちながら持続し続ければ
生命は存続する循環の中にある