こんなでよかったっけ?
どうやら私には
猫になる自由がないようだ
子供のころ
みにくいアヒルの子の童話を読み
密かに
「ぼくは、ねこのこだ」と勝手に思うことにした
猫女とか
化け猫とか
病気の猫とか
憎たらしい野良猫ではなく
上品で
かわいらしい
上流家庭の飼い猫になれる
そんなことを夢想していた
*
自由に使える時間
そいつを
猫はたくさん持っている
そしてそいつを
ひけらかすように
それでいて
控えめに使っている
そこが
くやしくて
うらやましい
*
こんなでよかったっけ?
人生を振り返り
このままでよいのか迷うことがある
猫にも迷いはあるのだろうか?
駆逐されてきた夢も
人生を彩ってきた
美しく
醜く彩る
なぜそれを振り返るのだろう?
そんなことをしていては猫になれない
悠々とした時間と
目先になる興味深い何かに興じなければならない
猫になるのだ
飼われても
飼われない
自由な猫に
こんなでよかったっけ?
そんなどうでもよいことは置いておいて
今に興じるのだ
ゆったりとゆっくりと自由に
今と戯れるのだ