現象と構造:標準であるということ希求する
猫の爪は
前足にはちゃんと5本あるのだけれど
後ろ足には4本しか無い
自然というものは
足の指が
4本でも5本でも構わないらしい
パンダは6本だと聞いたことがある
4本でも5本でも6本でもよいのだ
なのに
人間は5本にこだわる
4本でも6本でも
そんなに不便ではないのだろうが
5本にこだわる
標準でいられるからだ
標準である心地よさが
5本の指を要望するのだ
この標準を超えると
美しさを感じ
この標準を下回ると
醜さを感じる
普通があり
それよりも心地よい優秀があり
それよりの居心地が悪い劣悪がある
こうした心持に振り回され
疲れ果て
4本や6本の指に悩まされるのは
精神の仕業であり
肉体に罪はない
心が強いことによる悩みでもあり
心が弱いことによる悩みでもあろう
心は日常が醸し出す標準に縛られている
時に
非日常の中で
心を解き放ちたくなるのは
この標準を捨ててしまいたい無意識がなせる業なのだろう
これもまた心に振り回される所業ではあるのが