ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

分散と集中


凸レンズで火を熾せる


レンズと黒い紙の間の距離を調整して
太陽の光を黒い紙の一点に集中させると
煙が出始め
やがて紙が燃え始める


分散している光を
一点に集中させ
点火する大きな力となる


人の群れも
てんでバラバラに動いている時と
同じ方向に向いて整列して行進している時では
集団の力の強さが全然違う


このような大きな力は
降って湧いたのではなく
集めて強くしたものだ


逆に言えば
大きな力を分散させると
力が弱くなる


戦後の農地開放で
大地主の力が萎えた


個々の小作農は
農地を手に入れ
個人として少し力をつけたけれど
やがて産業が発展してゆくと
農地を離れ
企業へと集まっていった


人間には
集団の力に魅せられるところがあるらしい


個人の力を比べ合うよりも
自分の属する集団の力を自慢するのが大好きだ


そして
集団の中なひとりが
好ましくない行いをすると
その不届き者を矯正し
集団をより素晴らしいものへと誘い
より強い集団へと遷移してゆく


この過程で
次から次へと自由ははく奪され
集団の流れの中で流されてゆかなければならなくなる
それに逆らえば弾かれる


そんな風潮が強くなる


まれに
集中砲火を浴びた個人が
集団の餌食になる


そこまではいかなくとも
集団の中で力の流れが強くなればなるほどに
個人は疲弊し
力の分散と自由を欲することにもなるのだろう


集団を離れた時
ふと飛び込む景色が
いつもとは違うものに見えてくる


普段見向きもしない
浮雲に思いをはせる


レンズで集中させた光のように
すべてを焦がしてしまうような目でばかり
物事を眺めていては
とても哀しい顔になりそうだ

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