ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

言葉ではない人間の音


病院の夜には雑音がない


とても静かなで
隣で寝ている人の寝息もよく聞こえる


「あの仕事をしなければ・・・」という義務感も
ここには降り注がない
こんな状態では何もできないと諦め果てているからだ


雑念を捨てるには、とても良い環境だ


こんな静かな環境の中で耳を澄ますと
人の営みが聞こえてくる


最初に述べた寝息にも
人それぞれに個性があり
いびきには
もっと区別しやすい個性がある


ともすれば
遠くの部屋から
叫び声が聞こえてくることもある


ブァーーーン ヴァーーーン
と繰り返される叫びもありば


ギャーーーーン ギュァーーーン
と繰り返される叫びもある


人間も吠える


言葉のない太古の世界でも
こんな人間の営みの音を
互いに聞き合っていたのだろう


ふと
子供の頃
父親の胸に耳を当て
心臓の音を聞いたことを思い出された


父親の匂いを嗅ぎながら
父親の心臓の音を楽しんだ


明日は退院だ


「仕事をしなければならない」
そんな義務感が降り注ぐ
熱い世間に戻ることになる


戦争中なら
熱い戦場に戻るということなのだろう


言葉が創り出す世界は
時代に応じて変わってゆくのだけれど
言葉未満の人間の音は
絶えず言葉を支え続けていくのだろう


きっと
しばらくすれば
言葉の世界に染め上がり
言葉以外の音が醸し出す世界のことは忘れてしまうのだろう


それでも
例えば
お腹が ぐぐぐ となった時
「ああ、頑張ってるな」と
思い出しては
言葉ではない音の世界に感謝をしたい

×

非ログインユーザーとして返信する