言葉の背後世界は
言葉だけで形成されていない

言葉には
記憶がこびりついている

「池」という言葉は
様々な池の姿ばかりではなく
そこでの思い出をも引き出してくれる

過ぎ去った現実が
言葉には隠れている

言葉の仲介で
その現実が
今の現実と会話をする

この会話の中で
平衡状態が形成されている

過ぎ去った現実の記憶には
曖昧さや嘘が混じりこむ

今の現実には
未来への夢が入り込む

こうした非現実が
言葉の背後世界に入り込み
平衡状態を非現実的なものへと遷移を促す

ここにおいて
言葉の背後世界は
現実とは異なるものとなる

現実と背後世界は
同じであり
異なりながら平衡を維持しているのだ

現実に重きを置けば現実主義の言葉が生まれ
非現実に重きを置けば理想主義の言葉も生まれる

言葉の背後世界には
厳しい現実も
甘美な夢も用意してくれている

心が言葉を動かすからなのだろう

その言葉の背後世界に
心が揺られ縛られる

心と言葉の
行きつ戻りつの平衡関係が
甘く厳しく揺れ動く