ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

能動的反応:奇妙から普通への変遷


生き物というものは
総じて奇妙な存在だから
遠くの国に行くと
奇妙な生き物に囲まれることになる


だから
植物も動物も景色も新鮮に映る


そんな奇妙な国で
しばらく暮らしていると
そこにある景色にも馴染み
奇妙な生き物たちも
ありふれた普通の生き物に思えてくるから
馴れというものは便利で不思議な機能だ


ともあれ
そうなれば
もう
奇妙な生き物はいなくなる


奇妙であった生き物が変わるのではなく
私がその生き物に慣れ親しんで変わるのだ


遠い国の人々が
奇妙な言葉を話したり
奇妙な社会制度を維持しているのも
生物がもともと奇妙な存在で
人間も奇妙な存在なのだから仕方がない


遠い国の人々にしてみれば
私の話す言葉が奇妙であり
私が身に着けている社会習慣が奇妙なのだ


人間も奇妙な生き物であり
私も奇妙な生き物に違いない


ただ
毎日見て
慣れているから
普通になっているだけで、本質的には奇妙な存在だ


そんな普通に慣れた私自身にも
奇妙な領域が残されている


私の骸骨や内臓は
私には見ることができない神秘の領域だ


その領域では
頭では存在しているとは知っているが
見れなし触れることもできないので奇妙なままだ


仮に
私の骨や内臓が私が見ることがあったなら
聞きしに勝る迫力で
奇妙なものとして私の意識に迫って来るだろう


そんな奇妙なところを
私自身が抱えているからなのだろう
日常の中のふとした瞬間に
ふと
私自身が奇妙な存在だと気づかされることがある


自分録音した声に驚いてみたり
録画された自分の姿に驚いてみたり
そんなことしないはずなのに
そんなことをしたと指摘されてみたりする


私は私を使い古しているようでいて
まだまだ使い慣れていないらしい


この奇妙さが
うれしい時もあり
辛い時もある


頭ごなしに
「自分はそんなはずがない」などと
この奇妙さを追い出そうとせずに
しばらく
新しい自分と付き合ってみるのも一興なのだろう


年寄りの冷や水に
なるもならぬの運しだい
どうせ奇妙な生き物と開き直れば
いづれ
全て平和で丸く収まってゆくと信じたい


その奇妙さに慣れるのだ


慣れて普通になって馴染むのだ


この白髪や皺にも
硬く歪んでゆく身体にも
慣れ親しんで
私のものにしてゆくのだ

×

非ログインユーザーとして返信する