「私」という現象が持続している

食欲に憑りつかれたり
睡魔に襲われたり
お金に惑わされたり
夢に憧れたりしながら
様々な極相を経由しながら
「私」という現象が循環している

この循環を
五感が促したり抑制したりしている

見えるもの
聞こえるもの
匂うものに惑わせれながら
触り
味わいしながら
「私」は記憶を蓄積させている

この記憶に基づき
他者と会話をし
他者との記憶の共有を確認したり
「私」あるいは他者の記憶の欠損や齟齬を確認したりする

このようにして
「私」は人類の記憶を蓄積し運んでいる

「私」に意味があるのではない
「私」が運ぶ記憶に意味があるのだろう
「私」が消えても
運ばれるべき人類の記憶は
他者の記憶として蓄積され運ばれてゆく

命が遺伝子を運ぶで船あるように
「学ぶ」ということは
学問を運ぶ船なのだろう

船は
運んでいる意味を試しながら
時間を進む

沈まぬように
沈まぬように
運んでいる意味の価値を推し量る

「私はすごい」
「私はすごい」と櫂を動かし
自己肯定しながら
時を進む

正しさや
確かさの保証など本当はない
ただ
自らを信じて
進むより他はない