ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

局在と遷移:「記憶にございません」という常套句


細胞は膜で隔離されていないと
その内部で予定された反応を実践できない


膜で隔離された
特定の環境の中で
特定の反応が実践されている


だから
隔離している膜が壊れると
調和が成立していた環境が破壊され
特定の反応を実践することが出来ないくなり
特定の反応の連続として存在していた細胞が消滅する


外部から隔離されていてこそ
成立する調和がある


隠避しなければ崩壊する関係も
隔離されてこそ持続可能になる


「記憶にございません」
という常套句が指し示すように
記憶は隔壁の向こうにある


人様の記憶は
言葉にされない限り闇の向こうだ


私の記憶は
私の中にとどまり
他人には届かない密室の中に在る


この安心感の中で
私は
私の記憶に浸り
傍若無人の限りを尽くす


外の世界とは調和しない非現実的なあれこれが
この密室の中では調和のとれた夢となり現れる


外とは調和していないから
現実を突きつけられると崩壊してしまう夢の世界だ


こうした夢の世界に住む私が
より私らしい私なのかもしれない


その私に戻れるように
夜眠くなり
現実を見つめる目を閉じるのだろう


眠ることなく目覚め続けていると
夢の私は現実に浸食され続け
あげくに
夢と現実の隔壁が崩壊し
夢の私は現実の中に溶けだし
消えてなくなりそうだ


消えてなくならなければ
現実化した機械に私はなるのだろう


私は
他人には届かない密室の中にいる


そして小窓から
現実を眺め
うれしかったり
哀しかったりを繰り返す

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