ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

感情と思考:習うより慣れろ


毎朝
明るくなるころに
金魚に餌を与えている


そのことを
金魚も記憶しているのであろう

水槽に近づくと
金魚たちは興奮したように水面に集まり
競うように泳ぎ回っている


夕方
水槽に近づいても
金魚たちにこうした興奮は起こらない


金魚たちにも
記憶があるようである


餌を与える時間を
朝から夕方に変更すると
最初は混乱があるのだろうが
やがて
その習慣に馴れてくると
夕方に近づくと興奮し
朝に近づいても興奮しなくなるであろう


「習うより慣れろ」という


馴れて記憶が染みつくと
行動が変容する


このような行動変容により
道徳も維持されているから
江戸時代の人が
現在にタイムスリップしてくると
トラブルを引き起こすことになる


昭和の習慣に馴れた者も
記憶がそのままであると
令和の時代に混乱をまき散らすことになる


私は
金魚のように
時代に馴れながら
記憶を書き換えながら生きている


時代と場所に応じて
この書き換えを誘導する何かが存在しているのである


金魚にとっての餌を与える私の様な存在が
私の外部に存在し
私の記憶を書き換えてゆく


子供の頃
お年玉をたくさんくれるおじさんは
良いおじさんであり
お年玉をけちるおじさんは
悪いおじさんであった


こんな記憶を含め
たくさんの記憶が蓄積され
私はこんなおじさんになろうとしてきたのであろう



それなりに
私は私に馴れている


この慣れ親しんだ私が
外部に苦しめられることがある
あるいは
外部から思わぬ喜びをもらえることがある


そんなこんなの記憶が
また
私を変容させてくれるのだろう


私は
外部に慣らされるように作られているらしい


この慣らされた私を剝ぎ取り
時に洗濯しなければ
私は外部にまみれ
私でありながら
私を失ってゆくのかと思うと
少し悲しい


水槽の中のランチュウが
今朝も
ゆがめられた体を
懸命にゆすっている

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