ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

「私の」というレッテルを同梱する登記


小学校の入学準備として
文房具に名前を書く作業がある


今は名前シールを張っているようだけれど
「これは誰のもの」
こういったレッテルを張り付ける行為ということで同じだ


この行為は子供たちの間で
物の取り合いが起こるのを未然に防ぐのにおおいに役立つ
大人でも同じだ
不動産登記は土地や建物にレッテルを張り付けるシステムだ




革命前の帝政ロシアの時代には
農奴の登記制度があり
農奴の名前を登記し
その名前に該当する人物の所有者を
裁判所で登記していたようだ


領主により
所有している領土の広さや農奴の数が違っていた


広さや数だけではない
その質も違っていた


生産性の高い領土を持つ領主もいれば
生産性の低い領土を持つ領主もいた
領主のやりようでずいぶん変わったようだ


農奴の生活はというと
ご主人次第ということがずいぶんあったようだ


すさんだ領主のもとでは
すさんだ農奴が生活していた


無論一般論だろう




所有するということに責任があるのだろうか
その所有にふさわしい者はだれなのか


そんなこととは無関係に無造作に所有がなされる
そう感じることもある


いや
「ふさわしい」の考え方が違うと
所有の適者も変わるのだろう


革命は考え方の大きなシフトであったのだろう




所有 支配 関係 依存 愛 恋


人間模様を展開する小説の中で
登記はできずとも
様々な所有レッテルが同梱と剥脱をくりかえす
スケールがとても小さな革命の連続だ


同梱はシステムへの組み込みであり
剥脱はシステムからの離脱である


目新しいシステムは魅力とリスクに満ちている
だからおもしろい舞台になる


その舞台に乗るのか降りるのか
それが問題だ


ーーーーーー
ゴーゴリ著「死せる魂」岩波文庫
帝政ロシアを舞台に
死んだ農奴を買いあさり信用をつけ
銀行から融資を受ける
そんな小説


農奴の買い付け先の領主の個性と
その領土や農奴の個性をうまく関係づけられている


農奴は物理的に領土につながれているわけでなく
成行きの中でそこで暮らすことを運命として受け入れていたようだ
領主の悪口やらなんやら
よくある世間話に花を咲かせ
楽しく暮らしている場面もあった


ありがとうございます。

眠れぬ夜の怪物フェイク


一度寝ついた脳が
夜中に目覚めて眠れなくなることがある


迷惑な話だ
眠ろう眠ろう 眠れ眠れ などと思うほど
眠れなくなる


そのうえ、おかしなことを考え始める
どうでもよいような嘘なのか真なのかわからないことを考える


先日も、原子核の周りをまわっている電子に悩まされた
電子のスピンがどんなものなのか気になってしまったのだ


原子核がプラスで電子がマイナス
このマイナス電子に
スピンが右巻きのものと左巻きのものの2種類あるらしい


このスピンは何者なのか、気になったのだ


どうでもいいじゃないかと思いつつ
ますます眠れなくなる


眠れない頭の中に「磁場」が現れ
磁場とスピンの関係を夢想した
電子の流れが電場とすれば
スピンの流れが磁場だろう
となれば
フレミングの左手の法則との関係も気にかかる


左手を動かして
ますます眠りから遠ざかる


翌日、眠い目で本屋へ行き磁場の本を探す
幸い見つからず
別の本を買い読むことにした


それきり
この怪しい思考はいなくなった


その代わり
別の怪が右回り左回りにスピンしながら頭の中を駆け巡り
消えてゆく
嘘や真から切り離された自由の世界だ


ごくたまに
生き続ける怪がいる
そいつらは次第に怪でなくなり
私の中でおなじみの常識になり下がる
自由が失われ、束縛された思考として生き残るのだ


嘘から出た真という奴だろう


真は生真面目になり
役に立つがつまらない
だから夜な夜な現れる怪は娯楽だ
しかし
眠りたいのに眠れない
大迷惑な自由である


せめてもの救いは
窓に広がる はてなき夜空
はかなく消える流れ星
そんなところだ


月も雲もない星空は
澄みきった鋭角となり
眠りかけた脳に突き刺さる


ーーーーー
メモ
磁場について検索してみたところ
難しい言葉と難解な関数の羅列。
わかる人もいるというのが
すごいですね。


ありがとうございます。

二つの動詞の同梱

飲んだら乗るな
という標語があります


飲んでも飲まれるな
というのもあります


読んでも読まれるな
というのもありうべきか、、、


言葉通りに「読まれるな」を解釈すると
意味不明かもしれません


読んでも飲まれるな
という感じかもしれません


しかし
豚を食べても豚にならないように
そうそう本を鵜呑みにできません


本に飲まれるのは
取り越し苦労なのでしょう


ちゃんと読みながら
単語や文節に分解消化して吸収しているのでしょう


それでも
胃がもたれ腸が悲鳴を上げるようなものを
飲み込んでしまうことがあるかもしれませんので
注意するに越したことはありません


心地よい消化剤があればありがたいところです


ただ所詮、書物です
読まなければただの紙です
信じなければうその羅列です


自分の中で消化をすれば
毒にはならないはずなのですが
栄養とわずかな毒が混ざっていたり、、、
そういえば
フグは少しピリリとしたほうが旨いと通は言うとか


わずかな毒を毒として
品よく笑える本がいいですね


ーーーーー
メモ
ショーペンハウアー著
「読書について」新光社古典新訳文庫
この題なのに
「本を読むな」がキーワード。
ユニークな本です。


ありがとうございます。