ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

言語体系を未来へ送る

言葉は
未来を描ける
過去も描ける


アナウンサーの訓練として
常々日常の実況中継を頭の中で実践するというのがあるらしい
現在を言葉に置き換えてゆくのだ
うまい下手があるので
何回も繰り返し
うまくなるように鍛える必要があるのだろう


しかし限度がある
百聞は一見に如かずということだ


鍛えられていない言葉は
その不正確さゆえに紛争を導くこともある


所詮言葉だ


されど言葉である


ナレーションは映像に深みを与える
ナレーションにより
過去から未来への流れの中に
映像を浮遊させることができるのだ


来るべき理想の未来
そのために教訓とすべき過去


このような情報を共有し
集団が未来に向かって手に手を取り合って
実践を繰り返す


運動会の大玉転がしだ


情報という大玉を
集団で未来へと運ぶ


大玉を送っているという一体感と充実感
そいつを味わいながら
人は次々と入れ替わり
大玉だけが未来の人々へ贈られる


言葉や文化はそういうものだ


贈る大玉が違えば
言葉や文化も違っているということだ


毛色の違った大玉を送るのは
どうも気が引ける


しかしそれは差別の始まりだ
それを避ける努力が推奨される


運動会の大玉送りでは
2回目の戦いは敵方の球を使い行う


相手方にエールを送る形式だ



言葉は未来と過去の時間の壁を乗り越える
人と人の間の溝も乗り越える
しかし言葉を違える者同士の溝を超えるにはひと工夫必要だ
言語が統一されれば手っ取り早い
しかし
統一された言葉でののしりあってばかりでは本末転倒だ


それにしても
口は災いの元であり、沈黙は金である
猫や犬はしゃべらないからかわいいのかもしれない


しゃべりながら沈黙する術を
頭の中の実況中継で鍛える
そんな必要もあるのだろう


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メモ
カズオ イシグロ「忘れられた巨人」ハヤカワepi文庫
違う言葉を話す隣接する民族間の
それぞれの過去と未来への意思が、
記憶の機能とともに複雑に絡み合い交差する。
ノーベル賞受賞おめでとうございます。
遅ればせながら一冊読ませていただきました・
さすが面白い小説です。


ありがとうございます。

全体の利益と部分の利益


意識は
身体という空間を支配する王様のようにふるまう


裸の王様だ
何でも知っているようなつもりになっている


熱にうなされたり
臓器の痛みに悩まされ
何も考えられない


そんな状態のことを
からりと忘れて
身体に対して権威を振りかざし
忠誠の度合いさえ推し量る


この狭い小さな世界の
神様にでもなったつもりでいるのかもしれない


全体を統括するということは
そういうことなのだろう


この意味で
意識は全体主義の猛者である
部分の不備が顕在化するまでの間を
謳歌する


調子に乗りすぎて
部分をないがしろにすると
終末が早く近づくことにもなるのだろう


盛者必衰の理をあらわす祇園精舎の鐘の声は
内側から沸き上がり
外へ外へとじわりと広がり消えてゆく


悲鳴をあげる臓器もあれば
沈黙の臓器もある


細胞は日々増えながら死んでゆく


死にながらシステムが維持されるのだ
使い古された部分は除去され
新しい部分に置き換えられなければ
システムは機能不全に陥るからだ


確かに我思うゆえに我はあるけれど
ただ思うだけで私があるのではない
智だけではない
知だけでもない
血が血管のなかを循環しなければ始まらない


一粒の赤血球を笑う者は
一粒の赤血球に泣くのだ


では
この一粒の赤血球に
どのような権利が付されるべきなのだろうか?


一円玉は法律で保護されている社会的存在だ
これと同様な権利が
身体を構成している一粒の赤血球にもあるのだろうか?


たまにそんなことを考えながら
健康に留意するのも
王様たる意識の務めだろう


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メモ
安藤肇、大屋雄裕著「法哲学と法哲学の対話」有斐閣
難しい本であと数回読んでもきっと半分も理解できない。
「著者の死」ではないけれど
著作の中で著者は読者に無視される宿命と割り切り読むのも
読書の内とお許し願いたい。
刺激的な本です。


ありがとうございます。

情報の選択は未来への賭博である


生き物は地上の情報産業だ


情報は自然選択に供されると
ダーウィンとウォレスが発見した


情報は親から子へと遺伝すると
メンデルが発見した


情報は追加追加で高度に組織化すると
ヘッケルが発見した


情報が命を生産する


文明も情報産業だ
命をベースにした神経系が
遺伝子とは別系列の情報産業を可能とした
情報の蓄積と伝承の多様化だ


現在はコンピュータが追随している


情報の実践は
未来に向けた賭けである


賭けに勝てば選択される


リスクを背負える者は
情報を改変し
より良い未来に一口賭ける


リスクを避ける者は
昨日と同じ情報を使い廻す
留まる輪廻だ


突然変異のほとんどが
生きながらえない現実が
留まる輪廻を正当化する


しかしながら
人間には智慧がある
未来を想像し創造する知恵がある
でたらめな変異ではない
計算された変異が計算された結果を導く


が、時に計算が間違えている
それがリスクだ


多変量関数の計算においては
見逃した変数が大きな影響をもたらすこともある
それでも
転びながら自転車に乗れるようになる


AIも間違えながら成長する


きっと留まれば相対的に衰退してしまうのだろう


そんな時代は忙しい
忙しく
忙しく
騒がしい因果応報が輪廻する


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メモ
養老孟司著「遺言。」新潮新書
生命と情報の関係に関する発見として
ダーウィン進化論、メンデル遺伝学、ヘッケル系統発生について論しています。
いつもながらの落ち着いた明快な論調が楽しい一冊です。


ありがとうございます。