ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

生命は前例踏襲を繰り返す


昨日と同じことをすることは
思うほど簡単なことではない
なぜ止まっているゴルフボールが
同じように飛んでくれぬのだろうか?


同じことを繰り返すことができる能力は貴重だ


同じよう内繰り返せないことがある
だからそれをできることはありがたいことである


命は前例踏襲を繰り返す能力が集まったシステムだ
できることを繰り返す
過去と同じことを未来において実践できるシステムだ


過去の成功体験を繰り返す


個体発生は系統発生を繰り返す
いつか歩んだ道を繰り返し歩む


遺伝子に刻まれた道がある
その道を繰り返し
また歩む


人間には記憶に刻まれた道もある
歴史に刻まれた道もある
道は歩く人がいて道になる
歩く人が増えるほどに道は広がる
語る人が増えるほど言葉は確固たるものとなる


前例を踏襲しながら
言葉が行き交う

昨日という檻の中で明日を夢見る

檻の中のライオンを檻から出すときは
すこぶる危険だという


井伏鱒二の『山椒魚』に出てくる小エビのように
狭い檻の中が終の棲家に思えてくるのだろう


今日と違う明日に不安がつきまとう
そして
昨日と違う今日に不満が沸き上がる
同時になぜか
昨日と同じ今日にも不満が沸き上がる


不満ではなく喜びが沸き上がることもある
昨日と同じでありがとう
昨日と違っているからありがとう


感謝と不満の分かれ道には何があるだろう


一概には言えないけれど
生き易さが上がるか下がるかということだろう
昨日と同じにしていれば
生き易さは下がらない
無事に明日が来るに違いない


前例は踏襲される
前例があれば安心だ
それでも
「このままでいいのだろうか?」
ふと、気の迷いが生まれてしまうのはなぜだろう


基本、前例を踏襲する
その中で異質化した何かが前例を打ち破る
異質なるものは失敗して泣きを見ることがほとんどだろう
前例には長い歴史の裏打ちがあるのだ
練りに練られたシステムだ
しかし時として
異質なるものが目覚ましい利益をもたらす


進化だ
一つの異質が
次々と既存の前例を評価し直す
大きな異質の成功は
次々とドミノ倒しのように
既存の秩序を組み替える
そして
新しいシステムが現れる


異質へのチャレンジは賭けである
きっと
異質なるものを導く者は
馬鹿であったり
天才であったりするのだろう


普通が安心だ
しかしということか
向上心が備わってしまった人間には
実は少し難しいから厄介だ

生命は同じことを繰り返すことを基本とする


朝起きる
お腹がすいている
トイレにも行きたくなる


どの一日も
朝起きて食べて出して夜寝る
このように総括できるので基本は同じだ
一生も
生まれて動いて死んでゆくという基本は
どんな英雄も私も同じだ


昨日とは違う今日ではあるが
たいていは同じようなことをしている
ただ
昨日と違うことに意識がむいているから
昨日とは大いに違って見える


カエルの子はカエル
それでも
たまに
トンビがタカを生む


昨日より少し違って
いいことがあると嬉しいし
昨日とは少し違って
不都合があると悲しい


一生のなかでひとつだけの今日
一日一日それぞれ違う意義があるのだけれど
人はそれを比べたがる
オンリーワンでいいじゃないか


そう考えることもできるのだけれど
基本的に同じような日が繰り返しているのだから
何が違うのかのほうに意識が向く
基本的に同じような生き物がたくさんいるから
何が違うのかに意識が向く


そして
そのわずかな違いがもたらす
その後の違いに注意が払われる
有意義な違いであるのか
無意味な違いなのかが見極められる
有意義な違いを虎視眈々と集めるのが
技術の集積だ


カエルの子がカエルでいるよりも
トンビがタカになるほうが良い


そう思うように
人間は設計されているらしい


そんな改良を積み重ね
ずいぶんと住みやすい環境を整えてきた
心地よい部屋
心地よい家
快適な住環境


ひとりだけの力ではない
歴史の中で小さな力を集積して
大きな力になってきた
人の力を超えた超人は
集団と継続の成果の象徴なのだろう


なんにせよ
人には
同じようなものの中から
都合の良いものをかぎ分ける力がある
そして
それを記憶して
明日に活かす力がある


今日と同じ明日と
今日と違う明日が頭の中で交差する
そして
末永く明日が続くよう
基本、同じことを繰り返す