言葉は
次から次へ伝わる反応の連鎖として
頭の中を流れている
その流れの中で
整理してきたものを
口に出したり
文章にしたりしている

だから
言葉の中心は
頭の中にあるように
ついつい感じてしまうのだけれど
言葉の中心は
社会の中に漠然と広がっている

物質ではない空気の中にある

頭の中で起こっていることは
このような中心である空気を拝借してきたものだ

言葉を操る技術も
頭の中で完結しているのではなく
頭の外側にある
言葉の中心である空気を取り込んでいるのであり
外にあるこの空気を取り込む技術なしでは
頭の中で言葉で動き回ることもなく
うまく動かすこともできない

外の空気を取り込む技術

この言葉にとって不可欠な技術により
一般的な言葉の法則だけではなくて
言葉の空気に含まれる人としてなすべき義務や権利といった
道徳的なものも頭の中に取り込んでくる

この道徳的なものを自分なりに消化する過程であるのか
頭の中で
義務を逃れ
権利を獲得するような知恵を生み出そうと努力したりする

頭の中に取り込んだ外の空気に
すでにある頭の中の何かが反応し
言葉として頭の中を流れ回る

その流れの中で
整理したものを
口に出したり
文章にしたりして外に吐き出す

外に吐き出された私の言葉も
外の空気と混じり合い溶け込んでゆくのだけれど
言葉の中心は偉大にドンと構えたままびくともしない

いくら声を発しても
永遠に不変であるような様相が維持されている

それでも
流れ落ちる一滴の水により
鍾乳石もわずかながらその形を変えてゆくように
言葉の中心たる空気も
その形を少しづつ変わり続けているらしく
言葉の世界にこびりついている権利や義務の形も
少しづつ変わってきている

違った空気を取り込めば
頭の中の言葉の反応も
少しづつ変わってゆく

みんなで
空気を吸い
空気を吐き
外にある空気を少しづつ
能動的に変え続けているらしい

頭の中は地球より大きいと感じることができるのは
言葉の中心をつくっている空気が大きいからだろう

科学者もこのような空気を吸っては吐いて
空気をもっともっと大きく広げている

果てしない言葉の世界が
見えないままに広がっている