ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

同一性:貨幣淘汰による貨幣遷移


都会を上空から眺めると
所狭しと建物が覆っている


都会の地価が高いのだから
空き地にしていてはもったいない
だから
所狭しと
同じような建物が立つのだろう


都会の土地と
田舎の土地では地価に差がある


一般的に
都会でも田舎でも
駅が近いと地価が高く
逆に遠いと地価が低い


このように
値段というものは
アプリオリで固有のものではなく
アポステリオリな可変的な存在だ


このような可変的な値札をつけられて
地表はその値札に応じて
その景色を変えてゆく


都会では緑が無くなり
田舎では緑が残されている


貨幣価値に応じて
自然が遷移してゆくのだ


土地が貨幣価値を生むように最適化され
地価は上がり続け
より一層価値のある形状へと遷移してきた


その結果がコンクリートの塊という訳だ


コンクリートの塊は
自然の恵みを直接感謝するにはあまりに人工的すぎる


コンクリートの隙間から
貨幣の恵みを介して
間接的に自然の恵みを乞うことになる



あらゆるものが貨幣価値に換算され
その価値に応じて淘汰選択される貨幣淘汰が
自然を遷移させている


その結果として
人間に歪められた画一化された自然が
地表を広く覆うようになってきた


そんな時代にあってもなお
貨幣価値に惑わされずに残された自然は
人々に安らぎを与えてくれる


貨幣価値が無くても
たくましく生きている野生の動物や植物


貨幣価値に置き換えながら
自分を評価する日常に浸かれ
こそから離れるためには
貨幣価値のない中に立ち帰りたくなるのだろう


動物園の動物では物足りず
野生の動物に逢いたくなる時がある



「ぼくに
 値札をつけているのは誰か知っているかい?」
都会の土地は
田舎の土地に向かい問いかけた
「そんなの知らないよ」と
田舎の土地が答えたので
都会の土地はますます得意満面になって
言葉をつづけた
「そうだよね
 君にとって価値がどうなるのかなんて
 どうでも良いことなんだろうね
 僕は毎日、その価値を追い続けているのさ
 だから、君とは違っているんだ
 君も僕のようになりたかったら
 価値のことをもっともっと考えればいいよ」
田舎の土地は
都会の土地は随分と立派だと感心しながら考えた
「自分には努力が足りないのだろうか?」
でも
田舎の土地はしばらくすると
そんなことは忘れてしまうのだった



貨幣淘汰が進むに従い
自然の恵みは
どんどんと
貨幣価値の向こうに遠く霞んでゆく

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