文字は抽象的だ

象形文字でさえ
ピカソの抽象的絵画よりも
とても抽象的だ

表音文字となれば
具象的要素は排除されている

このような文字の連続である文章は
抽象の積み上げであるにもかかわらず
具象的な文章も生み出す機能を持っている

この機能は
言葉と写実対象の対応関係により生じている

例えば
「細い枝」という言葉と
それを意味する実在の小枝の関係がそれである

「細い枝」と小枝が
意識の中で同一視され
言葉が
意識の中で
具象的に写実されてゆく

「沈みゆく太陽」という言葉を見て
薄黄色の空に浮かぶ夕焼雲の姿が
意識の中に現れれば
言葉は
言葉の意味を超えて
具象性を増してゆくのだ

抽象的な文字が
意識の中で
具象的記憶と対応関係を形成しており
抽象的文字の羅列が
具象的な世界を写実してゆく

このような具象と抽象の対応関係の形成が
抽象を写実に変え
写実を抽象に変えている

対応的同一は
このような対応関係の賜物だ

写実と抽象を変換しあう間に
同一と
差異が生まれてくるのだ

同一として対応関係を結ぶ
抽象と写実

差異として対応関係を結ぶ
抽象と写実

言葉の数と
記憶の数
これらの無数の組み合わせについて
対応関係が生じる潜在があり
その関係が新たな記憶となる潜在が
意識の中で蠢いている

この蠢きの中で
有用な関係が帰納法的な繰り返しの中で
選択され
より強固な関係として
残存してゆく

記憶淘汰、、、
対応関係の選別だ

その対応関係を持つ有用性を
その結果から判断し
淘汰選択している

記憶という具象的抽象を
その結果から
有用性を評価しているのだ

DNAは
生命力の具象的抽象だ

抽象が
その対応関係に応じて
具象を繰り返し
その具象実践の結果
再び
抽象が再現され
それがまた
具象として再現されると
生命は
記憶は
未来へと承継されてゆく

具象と
抽象の
未来へつづく螺旋模様を描く対応関係が
循環する秩序を描き続けている