今を未来に再現し続ける

これが生命の宿命だ

この目的を果たすために
今をもたらした過去を
踏襲し続けている

同じ質料を集め
同じように形成し
同じ形相を
現在に再生する

このように
アリストテレスの四原因は
生命の再現を見事に言い表している

キノコを見ると
毒なのか
うまいのかを見極めたいと思う

人間も
生きながらえようと
同じような食べ物を
同じように消化して
同じように体の一部として利用している

こうして
今日と同じ体を
明日も維持するのだ

こうして
今日
明日のためのしつらえを
昨日と同じように繰り返す体を維持し続けるのだ

むろん
よりよい明日のためには
何かを変えなければならない

でもそれは
同じことの繰り返しの中の
ほんの一部の変更だ

同じことを
繰り返せる能力があってこその変更ということだ

昨日飲んだ水と
今日飲んだ水は異なる水分子ではあるけれど
同じ水として
私の体にしみこんでゆく

今日を明日に再現するために
昨日と同じものを探し続けるのだ

同じものを探し続け
帰納法を発達させ
この帰納法を機能させるために
言葉は異なる存在を同一のものとして
扱うよう必要があった

今日を明日に再現するために
これからも
同じものを探し続けてゆくのだろう

この探索の過程で
同じでないものが区別されてくる

きっと
差異化は
同一探しの副産物だ

同じもの捜しの失敗の記憶が
差異化を促す